「デスクで食事」が違法だったフランス コロナで解禁に

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デスクでの食事は無害に思えるかもしれないが、フランス人にとってはご法度の行為だ。ランチは同僚と一緒に楽しむべきもので、食事中は仕事の話は避けるか、少なくとも軽く触れる程度にすべきとされている。

実はフランスには、従業員がデスクで食事を取ることを禁じる法律がある。米紙ニューヨーク・タイムズによれば、これは労働法の3324ページ、R.4428-19条に記されている。だが仏政府はこのほど、職場での新型コロナウイルス感染を抑えようと、デスクでひとり食事をする行為に対して罰金を科さない方針を発表した。これは経済活動を続けつつ、3度目のロックダウン(都市封鎖)を避けるために仏政府が取った措置の一つだ。

フランスは美食の国として知られ、道端の一般人でさえその土地の郷土料理について驚くほど深い知識を持っているような国だ。とはいえこの法律は、単に食事を楽しみましょうというのが目的ではない。その根幹には、上司は部下を酷使してはならず、昼食時には休憩を取らせて、オフィスを出ることを奨励すべきという考え方がある。フランスでは1週間の労働時間が35時間(ただ実際には多くの人がそれ以上働いている)で、ワークライフバランスが厳しく守られている。

フランスの食文化はこれ以外でも、新型ウイルスの流行により多くの変化が起きた。世界の他地域と同様に、冷凍食品や日持ちのする常温保存食品の人気が高まった。10月に夜間外出禁止令が出されると、夜間営業の停止を強いられたレストランは通常の夕食時間を避ける営業方法を模索し始めた。

例えばリヨンのレストランでは、午前中に食べる伝統料理「マション」の提供を始めた。マションは豚のさまざまな部位やトライプ(胃袋)を使ったボリュームのある料理だ。また、午後5時からの特別ディナーメニューを始めたレストランもあり、これによりフランスが完全に「米国化」したと嘆く声が相次いだ。一方で人々は自炊に楽しみを見いだすようになり、11月にはラクレットチーズの売り上げが300%増えた。

ユーチューブでは、こうした新たな習慣を皮肉る動画も登場し、フランス国内で拡散した。「Bienvenue au Musée du Restaurant(レストラン博物館へようこそ)」と題された動画では、博物館のガイドが観光客にビストロ内部を案内しながら、「今では完全に消えてしまった」外食文化を紹介。ピーナツが入った小鉢を見せられた観光客が恐る恐る、昔の人たちは同じ皿に手を突っ込んでいたのかと質問すると、ガイドは当時の人々は今とは違って「何も恐れていなかった」と答える。

在宅勤務が増え、3度目のロックダウン入りの可能性も浮上するフランスでは、デスクでの食事が問題なくできるオフィス勤務を皮肉る動画が現れるまでそう長くはかからないかもしれない。

編集=遠藤宗生

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