英アストラゼネカ製コロナワクチンが米国で未承認の理由

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度重なる試練


アストラゼネカのワクチンの臨床試験は、一時停止と再開を何回か繰り返してきた。昨秋には英国で、接種を受けた人に神経障害の横断性脊髄炎とみられる症状が出たとして、各国での第3相臨床試験を45日間中断した。

また、南アフリカで感染が拡大している変異株「501Y.V2」について、査読前の論文ではあるものの、有効性が低いとする研究結果が発表されたことを受け、同国は2月10日、予定していたアストラゼネカ製ワクチンの接種を停止し、ジョンソン・エンド・ジョンソン製に切り替えると発表した。

さらに、南ア政府はアストラゼネカ製のワクチンを製造したインド血清研究所に対し、すでに購入した100万回分のワクチンを引き取るよう求めているとされる。

そのほか欧州委員会(EUの執行機関)は今月に入り、アストラゼネカが今四半期中にEUに供給する予定だったワクチンの半数しか納入できないと伝えたことを受け、ベルギーにある製造拠点を査察している(英国への供給を優先していると疑われている)。

こうしたことはすべて、ファイザーやモデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソンとの競争において同社が後れを取ることにつながっている。

米国での第3相臨床試験で良好なデータが得られなければ、アストラゼネカはFDAに緊急使用許可を申請しないかもしれない。米国で接種可能な新型コロナワクチンの種類がもう一つ増えるのは、まだしばらく先のことになる可能性がある。

編集=木内涼子

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