中国で多様化する「非公認教会」 政府の弾圧下も勢いを増す宗教事情

中国では非公認のキリスト教徒が増えている。写真は聖週間の日曜礼拝に参加する人たち(Getty Images)


一方、1990年代以降、中国で創設されたカルト集団(異端宗派)も布教活動を活発化している。これらの集団は強引な信徒勧誘や共産党への挑戦を目標に掲げて、政府の取り締まりの対象になっている。

中国大陸や海外で創設された、カルト集団


2014年には、中国政府の「中国反邪教協会」は「宗教や気功の名を使い、一般人を勧誘したうえで、信者としてコントロールし、それによって社会に危害をもたらす違法組織」11団体を邪教リストに掲載して公開した。

この中には、「全能神」、「世界基督教統一神霊教会(現世界平和統一家庭連合)」、「法輪功」なども含まれる。

全能神(東方闪电)は1991年に黒龍江省で張维山が創設した。その教義は聖書の箇所を引用しているが、カトリック、プロテスタントからは異端認定されている。低所得者や貧困地域にも信者が多く、中国共産党との決戦を呼びかけた。信者数は約400万いるという。

キリスト教系ではないが、気功の動作を取り入れた法輪功は1990年に吉林省で李洪志が創設した。共産党員や人民解放軍の間で信者が急増し、1999年頃にはその信者数は7000万人を超えた。

上海の大学で見た、エホバの証人の布教活動


邪教のリストには入っていないが、エホバの証人も中国では違法とされている。2019年に新疆ウイグル自治区コルラ市でエホバの信者十数名が「邪悪な宗教を用いて法執行機関の妨害を扇動した」罪で起訴されたことがあった。

エホバの証人の布教活動は上海でも行われていた。筆者が勤務していた大学の日本人教師の一人Oさんは「エホバの証人」のメンバーだった。

Oさんは当時60歳で、中国に来て3年目だった。大学で授業をするかたわら、同僚の日本人教師や、招待所(外国人教師の宿泊所)に掃除に来てくれる中国人のメイドさんに日本語や中国語の小冊子を配っていた。

エホバの証人の集会所は大学がある地下鉄16号線の沿線上の駅の近くにあり、毎週火曜日と土曜日の2回定例集会が行われていた。集会所は他にも上海市内にいくつか設けられているようだった。Oさんは日頃、体調があまり良くないといって、職場の懇親会には一度も出席しなかったが、エホバの集会には出かけていた。

彼女が入信したきっかけについて聞いてみたことがあった。地元の公立大学を卒業後、結婚し、3人の子をもうけたが、一番下の子どもが生まれてまもなく、夫が仕事中の事故にあい他界した。実家からの援助に頼れない事情があり、困り果てていた時、エホバの証人に勧誘され入信したそうだ。

中国では大学の常勤の日本語教師に採用されると、政府当局から1年間の労働ビザが発給される。Oさんは合法的に長期間中国に滞在し、伝道できたことになる。

昨今は中国国内の組織だけでなく、海外の宗教組織も中国での信者獲得を活発化させていることを印象づける出来事だった。

連載:中国のライフスタイルと働き方の新常識
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文=廣田壽子

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