中国には信仰上の理由から政府の介入を拒否する非公認教会が多く、その数は中国の全キリスト教徒の3分の2に達しているとみられる。
(前回の記事:中国で急増するキリスト教徒 共産党監視下なのになぜ?)
また、1990年代以降は中国で創設されたカルト集団(異端宗派)も布教活動を活発化している。現代中国の宗教事情とは──。
公認も非公認も、急増するキリスト教信者
中国政府の研究機関である「中国社会科学院」が発表する「宗教白書」を確認すると、中国の公認教会のキリスト教徒の数は、2010年は約3000万人だった。8年間で800万人も増加していることがわかる。
実際、筆者が中国に滞在していた時、キリスト教の勢いを実感した。筆者はプロテスタント信者であることから、上海市内にある公認教会「上海沪西教堂」の礼拝に出席。毎週日曜日に3回の礼拝が行われ、計1800人が出席していたが、礼拝のプログラムの最後には、新来会者の歓迎の時間があり、毎回20人ぐらいの人が立ち上がり、参列者から歓迎の拍手を受けていたことを思い出す。
一方、非公認教会の勢いも増してきている。
非公認プロテスタント教会は「家の教会」(家庭教会)、非公認カトリック教会は「地下教会」と呼ばれている。
非公認教会の信者数の情報について、「2010年世界基督教データーベース(World Christian Database)」は「中国のキリスト教総数は1億人を超えており、このうち家庭教会の信徒は7000万人」と発表。また、中国やインドなどアジア諸国で活動をしている超教派組織の「アジア・ハーベスト」は「中国にはおよそ8350万人のプロテスタント信者がおり、このうち5400万人が家の教会のメンバーである」と報告している。
いずれにしても、家の教会、地下教会の信徒数は、公認教会を上回るかなりの実勢になっていることは間違いない。
政府介入を拒否 自立を選んだ教会指導者の末路
前回も触れたが、中国共産党政府は1949年の建国後、外国勢力のなかでも特にキリスト教を排除した。その中で一部の中国人の指導者たちは政府と協議し、中国人自身でプロテスタント教会を支える(自養)、中国人自身が教会を運営する、(自治)、中国人自身が伝道する(自伝)の「三自愛国運動」を提案。これが当時の周恩来首相に賛同され、カトリック教会も同様に「中国天主教愛国運動」を立ち上げた。
しかし、この時、「三自愛国運動」への加盟を拒否したキリスト教会の指導者も少なくなかった。
王明道牧師(1900-1991)もその一人である。20世紀の「中国キリスト教自立教会の代表者」と称される彼は、北京の出身で、聖書の教え導きとキリスト教徒としての生活を重視した。説教と文書伝道を行ったが、自費で季刊誌「霊の糧」を出版するなどして多くの人々に影響を与えた。