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2021.03.03

未上場株の流動化でSPACより注目すべき動き


Cartaの面白いところは、市場において非常にユニークなポジションを確立している点です。同社のソフトウェアは、企業や投資家がキャップ・テーブルやバリュエーション、投資を管理するために作られたものです。しかし、同時にスタートアップの株に関するリアルタイムな情報を収集できるため、まるで「トロイの木馬」のようですが、実質的にはむしろこちらの機能のほうが重要です。

宝の山のようなデータをリアルタイムで更新できるということは、スタートアップ株取引の常識を完全に覆すくらい強力なツールになる可能性があるということです。それは関わる人たち全てに影響し、スタートアップの株へ誰よりも早くアクセスできることから、既存の取引市場さえも打撃を受けることになるでしょう。

CartaのCEOであるHenry Ward氏も、フィナンシャル・タイムズ誌の記事で次のように説明しています。「今の世界では、未上場で流動性が低いことと、上場していて流動性が高いことは、それぞれセットになっています。しかし、CartaXは『未上場で流動性が高い』企業の実現に貢献します」。また、「CartaXが成功すれば、10年後にはNYSEもNasdaqも存在しない」と断言しています。

もちろん、この破滅の危機を前に、業界の従来からのプレーヤーが手をこまねいているわけがありません。たとえば、SecondMarketという比較的業歴の長いスタートアップで、会社がスポンサーとなるタイプの公開買付けを仲介するプラットフォームへと成長を遂げた企業がありますが、これをNasdaqが2015年に買収しています。Nasdaqの報告によると、2019年の実績として、同社は87のトランザクションを仲介し、総額で48億ドル(約5070億円)が取引されたとのことです。

最終的には、未上場株取引のあり方が変わり、ほとんどがこうしたプラットフォーム上で行われるようになるでしょう。中でも、価格の透明性、買い手や売り手にとって非常に高い流動性、そしてスムーズな決済など、私たちが普段当たり前のように享受している上場株式市場の利点を最もシームレスに再現できたプラットフォームが、今後は主流になっていくと予想されます。そしてこのまま市場が進化し続け、未上場市場のプラットフォームが上場市場に入っていき、上場市場のプラットフォームが未上場市場に入るようになれば、いずれは未上場と上場の差がなくなる時代が訪れるかもしれません。

連載:VCのインサイト
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文=James Riney

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