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2021.02.25

イーロン・マスクを脅かすテスラ出身起業家5人が目指すEV革命

左からピーター・ローリンソン、スターリング・アンダーソン、ヘンリック・フィスカー(by Getty Images, Aurora)


ジーン・ベルディチェフスキー(シラ・ナノテクノロジーズ共同創業者兼CEO)

ベルディチェフスキーは2004年にテスラの7人目の社員として採用され、同社が初めて一般市場向けに投入したEVのロードスターの主任バッテリーエンジニアを務めていた。

しかし、ロードスターが発売される頃までに、彼の関心はリチウムイオン電池をより安く、より効率的にするための技術に移っていた。「ロードスターの発売後、会社に残るか、自分の会社を設立するかの決断を迫られた」と語る彼は2008年に退職し、2011年にシラ・ナノテクノロジーズ(Sila Nanotechnologies)を設立した。

シラ・ナノ社は、高価なグラファイトに代わるシリコンベースの負極を開発した。同社によると、この素材を使用することで、テスラや他のEVメーカーが使用するバッテリーの効率を少なくとも20%向上させることができ、最終的には50%の向上を目指しているという。

同社は今年1月に5.9億ドルを調達しており、累計の調達額は9.3億ドルで、評価額は推定33億ドルとされている。シラ・ナノ社は最初の大規模な工場を2024年にオープンする計画だ。

ヘンリック・フィスカー(フィスカー・インク共同創業者兼CEO)

かつてジェームズ・ボンドのためにBMWのロードスターをスタイリングし、アストンマーティンのデザインスタジオを率いた著名デザイナーのヘンリック・フィスカーは、テスラのモデルSのデザインコンサルタントを務めていた。

しかし、マスクは彼のデザインが気に入らず、2008年に彼がテスラにスパイ行為を行ったとして訴訟を起こし、結果的に敗訴していた(フィスカーは、マスクの主張が事実と異なると述べていた)。

フィスカーは2007年にFisker Automotiveを設立し、テスラの競合モデルのプラグインハイブリッドの高級車「Karma」を開発していたが、バッテリーの火災や組み立て工程における欠陥、2012年のハリケーンで輸送中の車両300台を失ったことなどで、2014年に事業を閉鎖していた。

そのフィスカーは現在、新会社のフィスカー・インクを設立し、電動SUV「オーシャン(Ocean)」の発売に向けて準備を進めている。この車両の価格は3万7500ドルからで、自動車エンジニアリング大手のマグナと共同で製造を行い、テスラのモデルYを競合に見据えている。

2020年にSPAC(特別買収目的会社)との合併で株式を公開したフィスカー・インクの時価総額は40億ドルで、製品開発のための約10億ドルの現金を用意している。同社は1年以内にオーシャンを発売する計画だ。

「自動車分野は、シリコンバレーが投資を考えるような産業ではなかった」と、フィスカーは、かつて資金調達に苦戦したFisker Automotive時代を思い出しながら語る。

「けれども、テスラは資金難からすぐに脱出できた。マスクはペイパル時代に莫大な富を築いており、その資金も役に立った。そして2010年という非常に早い段階でテスラは上場を果たしていた。我々はそうではなかった」とフィスカーは話した。
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翻訳・編集=上田裕資

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