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待っているだけじゃ何も起きない


「キッチンでどう学ぶかは、その人次第です。最近の若い世代は、与えられることを期待して、自分で学ぶことを忘れているような気がする。たとえば、休みの日や終業後に先輩を手伝いながら質問するとか、朝早く出勤して仕込みを終わらせて、その時間を別のことに使うとか。待っているだけじゃ何も起きない。僕は世界一のシェフではないけれど、店の誰より早く起きることができる。それが成功の秘訣だと思う」

カルバートは毎朝6時に起き、自転車で30分かけて駅まで行き、電車を乗り継ぎ、7時半に出勤。深夜まで働き、帰宅し、翌日もまた6時に動き出す。この全身全霊の毎日を、The Ivy時代から続けていたという。



しかし、Pied a Terreは、仲間が心配するような厳しい場所でもあった。当時を振り返って思い出すのはその辛さで、時には母親と電話しながら泣き出してしまったこともあるという。大学に通って遊んでいる友達とも疎遠になっていった。

「それでも続けられたのは、料理が素晴らしかったから。どの先輩も上司も、やっぱり料理は自分よりよっぽどすごくて、彼らのようになりたいと思っていた」

1年間、毎週メールを送った


苦しいながらも学びの多い3年を経て、2009年にニューヨークに渡る。次の店は、飲食界で世界的に有名なトーマス・ケラーが手がけるミシュラン三つ星の「Per Se」だ。

「ロンドンを出たかったから、20歳で考え始めて、渡米は21歳のとき。毎週メールを送ってたんです。内容は同じだけど、先方の受信フォルダで埋もれず新着になるように。Pied a Terreは名が知れていたから、十分魅力的に映ると思っていた。1年後にようやく返信がきたよ」

見事な執着でチャンスを得て、自費で面接に飛ぶ。世界的な三つ星レストランの面接は、「まず(海外まで)受けに来るかが大きなテストだったはず」だと彼は推測する。そして現地では、3日間、実際にキッチンに入り、どんな動きをするかを見られたという。

当時、開業5年目で運営も評判も確立していたPer Seは、“一生懸命働くこと”が評価されるロンドンとは違い、効率性が重視される、よりプロフェッショナルな環境だった。

キッチンはダイニングルームの3倍の広さ。スイーツ、ベーカリー、チョコレート……などそれぞれのキッチンがあり、プライベートダイニングも備え、忙しい夜には約100人のゲストを迎えた。そして、毎日メニューを変えていた。

なぜそんなことができるのか。そこがこの三つ星店の強みで、コーチングとオペレーションが完璧なのだ。一度作ったメニューは全てiPad上に集約され、店内のみならず、カリフォルニアにあるケラーの別店「フレンチランドリー」とも共有されていたという。

インタビュー=岩瀬大輔 写真=小田駿一 編集=鈴木奈央

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