増え続ける「ソーバーキュリアス」と変化するバーテンダーの役割

ノンアルコールカクテル「インプレッション」


選択肢が増えるなかで、これからのバーはどうあるべきなのか。南雲氏は女性がカギを握るのではないかと語る。

「もっとこの業界に女性が入ってきて欲しいですし、女性の提案が具現化されるべきだと思っています。必要とされるのは、化粧品を売るような清潔感、アップルストアのようなミニマルで機能的な美。さらに未来のバーは、バーテンダーがいないバーが主流になるかもしれません」

バーテンダーのいないバーとはどんなものか。「バーテンダーはカクテルのレシピの提案者で、できたカクテルをサーバーから提供するような形です」と南雲氏は言う。

筆者は以前、台湾のバー「ドラフトランド」で、オーナー兼バーテンダーのアンガス・ゾー氏のレシピ通りのカクテルをサーバーから頂いたことがあるが、低アルコールのものも選べ、ソフトドリンク感覚で楽しめた。立ち飲みスタイル、手ごろな価格もあいまってか、店の前に行列ができる人気ぶりで、ゾー氏に狙いを聞くと、「若い人たちの間でカクテル文化を広めたい」と語っていた。

バーテンダー=バーに関わるクリエイター


すると、バーテンダーのあり方自体も変わってくるのではないか。そもそも、ノンアルコールカクテルを提供することは、バーテンダーという仕事そのものと相反することはないのか。この質問に対して、南雲氏は「私は、提供するドリンクのアルコール度に関わらず、自分の仕事をバーに関わる全てのクリエイターだと捉えています」と答える。

「世界のバー業界を見渡して、レストラン業界ほどの成功事例が見つからないのは、組織力の問題だと思っています。バーの仕事の中でも適材適所で分担をする組織づくりが重要です。私はこの休業期間を活用して、Mixology Academia(ミクソロジーアカデミア)という教育機関のためのシステムづくりをしています。若い世代にこの業界に興味を持ってもらうためにも、教育システムを作り、人材づくりをしていくことが今の目標です」


2020年に虎ノ門ヒルズ内オープンした南雲さんの店「メメント・モリ」

コロナ禍により、時代の変革が加速する中、アルコールの楽しみ方、そしてバーのあり方も変わりつつあるのかも知れない。その流れをとらえ、大きく変わり適応していく。その挑戦の中にこそ、チャンスの種が眠っている。

文=仲山今日子

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