増え続ける「ソーバーキュリアス」と変化するバーテンダーの役割

ノンアルコールカクテル「インプレッション」


そんな世界的な状況を受けて、ジン「ビーフィーター」、ウィスキー「バランタイン」を製造するペルノ・リカール社は、今年1月、スペイン市場に共にアルコール度が20度の「ビーフィーターライト」「バランタインライト」を投入。日本未発売だが、発売されると酒税法上はジンでもウイスキーでもない、新しいジャンルのリキュールとなる。

日本でも、宮崎県の焼酎メーカー「黒木本店」が、食中酒に合ったアルコール度数(14度)にあらかじめ加水調整した焼酎「球”Q”(きゅう)」を発売するなど、その流れは日本にも訪れつつある。

こういった新しいアルコール商品は、カクテル作りにおいて、どう影響してくるのだろう。

「低アルコールカクテルを作る上で役に立つだけでなく、アルコール度が低いために、アルコール度を気にせず加えられるため、より複数の組み合わせが可能になります。カクテル作りのための選択肢が増えた、と考えています」

ところで、ノンアルコールカクテルは、ジュースとは何が異なるのか。

「一番は、味や香りがカクテルのように複雑で重層的であるか、ということだと思います。私がカクテルを作るときは、アルコール度数に関わらず、グラスの中で表現できる味のレイヤーを大切にしています」


メメント・モリで提供している、赤ワインのような香味のノンアルコールカクテル「リフレクション」

ノンアルコールオンリーの難しさとポテンシャル


国内にも、すでに低アルコール・ノンアルコールカクテル専門のバーも登場しているが、南雲氏は通常のバーのように普及するまでには、少々時間がかかるとみている。

「まずは、材料の問題です。海外では販売されているノンアルコールジンなどが、日本では薬事法の問題もありなかなか手に入らない。また、オーダーするお客様は増えてきてはいるものの、全体の1〜2割程度と決して多くない。ベースを自家製で作るほどには需要がなく、アルコールが入っていないため保存も難しい。これらの問題が解決すれば、もっと身近なものになるかもしれません」

南雲氏が、そんな現状のブレイクスルーになると見ているのが、レストランでのカクテルペアリングだ。これまで選択肢の少なかったノンアルコールでもペアリングを提供することで、食べる側には楽しみが、レストラン側も一人当たりの客単価の増加が見込める。

アルコールペアリングとの共存という可能性もある。確かに、現在のみられる多くのペアリングは、皿数に合わせてトータルで摂取するアルコールが増えすぎてしまうきらいがある。緩急をつける意味でも、低アルコール・ノンアルコールを挟み込む、または途中でノンアルコールに変更できたりする柔軟性が、これからの時代のには必要とされてくることだろう。
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文=仲山今日子

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