上田:IT、起業、そして文学、タンさんと共通点があると思っています。同世代ということでフリートークのような形で楽しく色々なお話ができれば。インタビューはたくさん受けておられるので。
タン:はい、もちろん。自然な感じで話せるのはうれしいです。このセッションではマスクを着ける必要もないですし。もし対面でしたら距離が近すぎますからね(注4)。
ドラえもんに見る未来
上田:さきほど日経コンピュータの1000号をお見せしました。特集記事のテーマは『ドラえもん』でした(注5)。
ドラえもんも含め、タンさんは日本の文化についてよく話されます。最近の漫画とかアニメでこれは面白かったというものはありますか。
(撮影:日経クロステック)
タン:『One Punch-Man(ワンパンマン)』です。以前、「なぜデジタル大臣をやっているのですか」と聞かれたときに「楽しむため」と答えました(注6)。
上田:僕もワンパンマンはすごく好きですね。そう言えば、ある編集者に「上田さん、ちょっとワンパンマンっぽいところがありますよね」って言われたこともあります。
(タン氏が左手を突き上げ、ワンパンマンのポーズを取る)
日本では外を歩いている人が減ってしまって、僕もネットフリックスとかアマゾンプライムでよく動画を見ています。昔はあまり見なかった日本のアニメも見るようになりました。そちらでもはやっているそうですが『鬼滅の刃』はいかがでしょう(注7)。
注4:台湾の政務委員(日本の閣僚に当たる)執務室にいるタン氏と日本の日経BP本社会議室にいる上田氏はSkypeを使い、タン氏は英語で、上田氏は日本語で語り、同時通訳を介して対談した。
注5:1981年創刊の日経コンピュータは2019年10月、第1000号(10月3日号)を発行した。1000号の特集では藤子・F・不二雄の漫画『ドラえもん』の中で未来からやって来たネコ型ロボットであるドラえもんが、ポケットから出す「ひみつ道具」が現在の技術でどこまで実現できるかを探った。対談開始前、第1000号をタン氏に見せた。タン氏は自著の中で「社会におけるAIの普及について想像するのであれば、ドラえもんがいい例」だと述べている。また『オードリー・タン 自由への手紙』(講談社)の中で「ドラえもんに好きな道具を出してもらえるなら『もしもボックス』を頼みます」と答えている。
注6:『ワンパンマン』は2009年からWebサイトで連載されている漫画。作者はONE。これをリメイクした『ワンパンマン』(村田雄介作画)が『となりのヤングジャンプ』(集英社)で連載されている。リメイク版から『One Punch-Man』という英題が付記された。主人公のサイタマはどんな敵でもワンパンチで倒してしまうが、強すぎるがゆえの悲しみを抱えている。サイタマの有名なせりふは「趣味でヒーローをやっている者だ」。タン氏は「楽しむために大臣をやっている者だ」と答えたのであろう。
注7:『鬼滅の刃(きめつのやいば)』は吾峠呼世晴が『週刊少年ジャンプ』に連載した漫画。テレビアニメになり、2020年10月16日から公開されたアニメ映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』は12月27日に日本歴代興行収入1位を達成した。台湾では2020年10月30日から公開され、11月15日に台湾におけるアニメ映画としては史上最高の興行収入を記録した。