仏製ドラマ「Lupin」がヒット ネトフリは「外国語の壁」を超えたのか?

主人公アサン役を演じるのはフランス人俳優のオマール・シーだ(Netflixオリジナルシリーズ『Lupin/ルパン』独占配信中)

全編フランス語のNetflixのオリジナルドラマが、強力なアメリカ作品に並んで、世界制覇を成し遂げました。

作品のタイトルは「Lupin/ルパン」。日本でもよく知られているあの「怪盗ルパン」からインスパイアされた作品で、英語以外の外国語ドラマとしては最大のヒットを生み出しています。

これはNetflixがリードする「グローカル」ドラマの時代を象徴する出来事と言えるでしょう。グローカルとは「global(地球規模)」と「local(地域的)」を合わせた言葉で、ある国や地域の人だけでなく世界中の視聴者を惹きつけるコンテンツづくりを意識するという、いまや世界190カ国以上に展開するNetflixが推し進めてきた戦略です。

「Lupin/ルパン」の成功は、今後、英語以外の作品にも、世界的大ヒットのチャンスがあることを意味するのでしょうか?

初動再生数7000万世帯の仏製ドラマ


Netflixオリジナルシリーズ「Lupin/ルパン」は、1月8日から全世界配信が開始されました。すると、28日間に7000万世帯で再生され、フランスをはじめ、ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、イタリア、スペイン、ポーランド、ベトナムなど世界数10カ国の「TOP10(総合)」で人気第1位を獲得。世界で最も会員数の多いアメリカでも、第2位をマークしています。

7000万世帯での再生は、日本でも話題になった「クイーンズ・ギャンビット」(アニャ・テイラー=ジョイ主演)の初動再生数を上回る数字です。「Lupin/ルパン」より2週間前に配信された「ブリジャートン家」が8200万世帯再生で、いまのところNetflix最大の1カ月当たりの初動再生数ですから、それに続く世界的大ヒットとなった作品と言えます。

「Lupin/ルパン」は、20世紀初頭にフランスのモーリス・ルブランが発表した推理小説シリーズ「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」に想を得て、現代版としてよみがえらせた作品。全編フランス語、キャストもフランス人で固めたドラマシリーズです(現在パート1第5話まで配信中)。

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Netflixオリジナルシリーズ『Lupin/ルパン』独占配信中

これまでも、Netflixからは、スペイン発のドラマシリーズ「ペーパー・ハウス」(パート4エピソード8まで配信)など、世界的人気を得た外国語作品が生み出されていますが、圧倒的な再生数を残す作品の大半は英語によるものか、ハリウッド俳優が出演するアメリカ発ものでした。

もちろん、これはNetflixだけの話ではありません。長年にわたって、アメリカのドラマが世界でも人気を得やすいということは周知の事実でした。だからこそ、なぜ「Lupin/ルパン」のような外国語作品がこれほどの素晴らしい結果を残すことができたのかという疑問が生まれてくるのは当然で、その理由も知りたくなります。
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文=長谷川朋子

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