仏製ドラマ「Lupin」がヒット ネトフリは「外国語の壁」を超えたのか?

主人公アサン役を演じるのはフランス人俳優のオマール・シーだ(Netflixオリジナルシリーズ『Lupin/ルパン』独占配信中)


「ルパン三世」が先鞭をつけたキャラクター再生


3つ目の成功要因である「怪盗ルパン」というキャラクターの再生についてですが、実は日本が生んだコミックそしてアニメの「ルパン三世」が、その先鞭をつけていると言っても過言ではないと思います。

そもそも「怪盗ルパン」というキャラクターは、少なくともアメリカ人には馴染みがなく、この名前を冠したアメリカ映画は1944年に公開された「ルパン登場(Enter Arsène Lupin)」を最後に製作されていません。つまり「怪盗ルパン」は、アメリカ人にとっては、ほぼ無名のキャラクターと言ってもいい存在でした。

そんなアメリカでは知る人ぞ知る「怪盗ルパン」というキャラクターを、実はコミック及びアニメ大国の日本が、主人公をアルセーヌ・ルパンの孫という設定にして、いち早く蘇らせていたのです。

先の「SERIES MANIA」のフォーラムでも、「日本の『ルパン三世』こそ、ルパン再生の元祖である」とあらためて紹介されていました。

また、2015年にはイタリアで「ルパン三世」の新作までつくられました。そのお披露目発表会がフランス・カンヌの国際テレビ見本市MIPCOMで催された際、世界各地のメディア関係者やジャーナリストが現場に殺到した様子を筆者も目撃しています。

今回のドラマシリーズ「Lupin/ルパン」の成功によって、日本のクリエイターたちが世界に先駆けて「怪盗ルパン」というキャラクターの再生に成功していたということにスポットが当たり、その先見性を誇りに思わざるを得ません。

日本の「ルパン三世」、そして今回の世界的人気を博したドラマシリーズ「Lupin/ルパン」、つまりこれは、「怪盗ルパン」がブレにくい鉄板のIP(Intellectual Property=知的財産)であることを意味しています。

いま、世界のドラマ製作業界では、世界各地にある強力なローカルIPの発掘に力を入れています。例えば、BBCのドラマシリーズ「SHERLOCK(シャーロック)」(2011年〜17年)はその成功事例になります。

前述のように、NetflixがローカルIPをグローバルに広げるグローカル戦略に目を向けていることは明らかです。英語圏以外の外国語作品への投資も増加していることや、世界各国へのローカルオフィス拠点の拡大や人材強化がその現れです。

その結果として、スペイン、ドイツ、韓国などから続々と世界的なヒット作品が生まれて、今回はフランスからも大成功を収める作品がつくり出されたというわけです。

フランスではNetflixへの加入者は900万人まで増え、「Lupin/ルパン」のようなヒット作を生み出す必要に駆られていたかもしれません。そうだとしても、英語圏に比べるとマイナーなイメージがつきまとっていた外国語作品が着実に支持され始めていることを証明できた功績は大きいと思います。

外国語作品にとって「Lupin/ルパン」がブレイクスルーのきっかけになったと振り返る日はそう遠くないかもしれません。シーズン1の後半6話以降の配信は今夏が予定されています。ひき続き英語圏以外の外国語作品に注目が集まっていくなかで、日本発の作品の世界的成功の可能性にも期待したいところです。

連載:グローバル視点で覗きたいエンタメビジネスの今
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文=長谷川朋子

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