時代は在宅勤務から「どこでも勤務」へ

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スウェーデンの音楽配信大手スポティファイは今月、新型コロナウイルスの流行収束後の方針として、全従業員が勤務場所を自由に選択できるようにすると発表した。ここ1年間で起きたさまざまな変化に対して組織的に対応した企業が今後、競争力を大きく高めていくことが改めて示された形だ。

スポティファイが導入する「どこでも勤務(ワーク・フロム・エニウェア=WFA)」制度の基本理念はとてもシンプルで、理にかなっている。第1に、仕事というのは「活動」であって、「場所」ではない。よって、仕事の成果はオフィスで過ごした時間の長さで評価されるべきではない。第2に、従業員に勤務場所の自由と柔軟性を与えることで、ワークライフバランスが改善し、仕事の効率が高まる。

スポティファイはこれにより、コミュニケーションと協働のプロセスやツールを駆使してより効率的で優れた形の働き方を追求する「分散型」組織として自社を位置づけた。

同社ウェブサイトの人事ページによると、今後は全従業員が自分の「マイ・ワーク・モード」を選べるようになる。完全な在宅勤務をしてもいいし、オフィス出社を選んでもよいし、その両方を組み合わせてもよい。働く都市や国も選べるほか、近隣に自社のオフィスがなかった場合は、会社がコワーキングスペースの利用料を負担するという。

こうした「どこでも勤務」制度はスポティファイに先立ち、タタ・コンサルタンシー・サービシズやツイッター、フェイスブック、ショッピファイ、シーメンス、インドステイト銀行も開始。米国特許商標庁(USPTO)、ギットラボ(GitLab)、オートマティック(Automattic)では新型コロナウイルスの流行前から導入されており、在宅勤務やどこでも勤務は今後、恒久的な制度として定着する可能性がある。

この新たな働き方によって得をするのは誰か? 最近のある研究によると、欧州連合(EU)域内で在宅勤務やどこでも勤務が可能な仕事に就いている人は全体の約37%だ。この割合はブルガリア、スペイン、ポルトガル、イタリアでは少なく、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクでは多い。特に、管理や補助業務、管理職や専門職、技術職の場合は、50%以上にリモートワークを導入できる可能性がある。一方で営業、サービス、単純作業、機械オペレーターなどはリモートワークを採用できる可能性が非常に低い。
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編集=遠藤宗生

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