政財界、芸能界などの一流の人々の通訳者として指名が絶えない、国際同時通訳者の小熊弥生氏は、著書『世界一100人を同時通訳してわかった「最速」で結果を出す人の成功哲学』(光文社)のなかで、通訳者として接してきたカリスマたちの「成功哲学」を明かしている。成功哲学の入門として最適なこと間違いなしだ。
同時通訳者から見た著名講演家たちの共通点を、同書から紹介する。
世界一の交渉力のもとにあるのは使命感
小熊さんはアンソニー・ロビンズの世界一のポイントとして「ミッションを完遂するために1ミリも妥協しない交渉力」をあげています。
世界一の交渉の真髄は、「自分の基準に相手を合わさせ、最良の環境で最良の結果を出す」。
一方、凡人は「相手の基準に合わせて、妥協した環境で妥協した結果しか出せない」。
実際、アンソニー・ロビンズが日本で初めてセミナーを開催するときにこだわったのが、空調だったそうです。彼は、セミナーで最高の結果を出すために、自分自身のパフォーマンスはもちろん、空調、照明、音響といった環境にもこだわります。
アンソニーの辞書に「妥協」という言葉はないのです。
それは、自分のためではなく、参加者のためを思うから。自分のセミナーに参加したすべての人を絶対に成長させると、自分自身に誓っているからなのです。その目的達成のために、一切の妥協はしない。彼の交渉力はそういう信念の上に築かれているのです。
UPWセミナーでの同時通訳(写真:著者提供)
「善悪で判断しない」寛大な心をもつ
次に紹介するのは、人間行動学の世界的権威=ジョン・ディマティーニ博士です。ディマティーニ博士の最大の特徴は、神様が実在するとしたらこんな人かも……と思わせるほどの「寛大な心」です。
なぜ、寛大でいられるのかというと、何事も「善悪で判断しない」から。目の前の出来事や人間をあるがままに受け止め、中立を保つことの意味を体現しています。
その聡明な姿からはとても信じられないのですが、子どもの頃は学習障害があると言われ、学校ではいじめられていたそうです。とても大学に進学できるとは思われていなかったとか。