グッチは近年、クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレによる着想豊かな刷新を経て、特にロンドン、パリ、ミラノといった観光地で絶大な人気を獲得していた。しかし、パンデミックの影響で旅行者が大幅に減少。ケリングの売上高に占めるシェアを拡大していたグッチの勢いにもブレーキがかかった。
グッチが打撃を受けたのは、主に西ヨーロッパで観光客が激減したことによる。イタリアのブランドであるグッチの売上高は、西ヨーロッパで47%減と最大の落ち込みとなり、次いで日本が32%減となった。いっぽう北米では、2020年に営業を続けていた店舗が多く、売上高は前年比で横ばいだった。
グローバルからローカルへの回帰
ケリングのフランソワ=アンリ・ピノー会長兼CEOは、決算発表において次のように述べた。
「従来から、特にグッチでは、ヨーロッパにおける地元顧客のウェイトはごく小さい。我々は、新しい地域の顧客に大きく依存するかたちでグッチを築いてきた。2020年にあらゆるものがローカル化したことを受け、我々は顧客をエンゲージするための強力なイニシアチブを導入している」
グッチは2020年下半期に勢いを取り戻したが、これは、旅行客ではない地元顧客、なかでも中国本土に住む顧客への依存を余儀なくされた結果だ。中国本土では、例年であればグローバルツーリズムに投じられていた市民の消費が、上海や北京などの大都市や、免税ショッピングで人気の海南島といった場所での国内消費に振り向けられている。
2021年に観光客が戻る可能性は低い
ピノーは同決算発表において、「観光業の不振は長くは続かず、ラグジュアリー・ショッピングは今後もレジャー旅行に欠かせない要素であり続けるだろう」と楽観的な見方を示した。