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2021.02.23

テスラの株価は過大評価されている

Photo by Milan Csizmadia on Unsplash

いまや電気自動車の代名詞的存在となったテスラだが、投資家は注意した方がいい。同社の株式は過大評価されている。それも、少しばかり割高というレベルではない。テスラの最近の株価は、財務状況に見合ったものとは言いがたいのだ。

偉大な企業の法外な株価


イーロン・マスク率いるテスラは、電気自動車を大衆市場に広めるという長年の構想を急ピッチで実現するという、途方もないことをなし遂げつつある。だがその財務状況は、現在の株価を正当化するものとは言えない。

状況を整理しよう。テスラの株価は、2月12日の時点で前年比410%増となっている。ヤフーのデータによれば、S&P500の伸び率は16%だ(どちらの数字も配当金は含まない)。だが、ここで過大評価を指摘するのは、単にパフォーマンスが突出しているためではない。根拠は少なくとも2つある。

成層圏にあるかのような、異次元の株価収益率


第一に、モーニングスターによると、テスラの予想株価収益率(予想PER)は現在200だ。これは簡単に言えば、来年の予想利益の200倍の株価で取引されているということだ。

比較すると、S&P500の予想株価収益率は約25だ。これでさえ歴史的水準をはるかに上回っており、過大評価を心配する声が一部の投資家からあがっている。市場全体が過大評価されているとしたら、(株価収益率ベースで)そのさらに10倍近くで取引されている銘柄は、過大評価ではないだろうか?

そうとも言い切れない。株価収益率の高さだけでは、過大評価と批判するには不十分だ。

利益が十分な速さで伸びているなら、株価収益率がかなり高いとしても、理論的には正当な評価である可能性もある。しかし、株価収益率が通常の水準を超えれば超えるほど、正当化するのは難しくなる。

突き詰めれば、単純な問いに行き着く。テスラの利益は、現在の株価を正当化できるくらい順調に成長する見込みがあるだろうか? もしそうでないなら、株価は高すぎるのだ。

アクチュアリーの見解


筆者は2月12日、ニューヨーク州ウエストチェスターの資産運用会社ニューエイジアルファ(New Age Alpha)で最高投資責任者を務めるジュリアン・コスキー(Julian Koski)と話した。同社はテスラの直近16四半期の財務諸表に目を通し、テスラが法外な株価に見合った利益をあげられるかどうかを見極めようとしていると、コスキーは説明した。

彼らのチームは、アクチュアリーが使う手法を用いて、投資家が期待する利益を企業が達成する確率を計算している。ご存知ない方のために説明すると、アクチュアリーとは、確率論や統計学など数学的な手法を駆使して、将来のリスクや不確実性の評価を行う専門職、いわば「スーパー数学者」だ。

テスラが投資家を満足させる利益を上げる可能性は低い


その結果、テスラは55%の確率で、必要な利益水準を達成できないという答えが出たと、コスキーは言う。言い換えるなら、投資家が期待するほどの利益をあげられない可能性の方が高いのだ。

ポーカーの経験者なら誰でも知っていることだが、勝算が見込めない時にはゲームを降りるのが賢明だ。テスラの投資家にも、降りるべき時が来たのかもしれない。

翻訳=的場知之/ガリレオ

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