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協調性とリーダーシップを発揮できるか、極限環境での活動でも的確な判断と行動ができるか、そして宇宙での経験を人々と共有する発信力があるか、などの項目を挙げ、JAXA有人宇宙技術部門事業推進部長の川崎一義は、特に3つ目の「発信力」を重視していると話した。

JAXA

これまでは晴れて宇宙飛行士に選抜されると、合格してから10年以上、JAXAに勤務することが必須条件だった。しかし今秋からは、採用後の職制の多様化が検討されている。実際、他国の宇宙飛行士の引退後のキャリアを見ると、教員になる人もいれば政治家を目指す人など、さまざまだという。

文系にも門戸が開かれた場合に、領域の専門家でない人が応募することへの不安について尋ねると、若田はアメリカでの例を挙げてこう話した。

「多様性はチームの能力を向上するために重要です。アメリカでは小学校の先生を飛行士に採用することで、下降傾向のSTEM教育の水準向上を図るなどもしています。教員の中での宇宙への意識を高めることが、結果的に理科教育の向上に繋がるのです。飛行後のキャリアがより明確になっていれば飛行中にできることも広がる。そういう考え方もあるかなと思います」

理系だけでなく文系にもチャンスが与えられ、さらには引退後のキャリアにも広がりをもたせることが実現すれば、宇宙飛行士は宇宙産業の中だけの存在ではなくなり、社会全体に刺激を与えるような存在となりうるのだ。

日本ラグビーフットボール協会専務理事、男子7人制日本代表ヘッドコーチの岩渕健輔も、これからの社会に求められる宇宙飛行士像について、こう述べた。

「宇宙飛行士というと特別な存在のように思ってしまいますが、社会に出ると職種ではなく、1人の人間としてどう社会を作っていけるかが大切なことです。宇宙にいくのが当たり前になるほど、宇宙での経験や考えを共有できる力が必要になるし、それが社会にとっても大切になっていくのだと思います」

盛り上がれ、日本の宇宙熱


しかし現状、日本では宇宙飛行士選抜への応募が他国と比べてかなり少ないという。

各国の前回募集時のデータでは、アメリカは約12000人の応募が、欧州やカナダでも1500倍以上の倍率なのに対し、日本では1000人ほどの応募数となっている。

見直し案が検討されるタイミングで、日本の宇宙産業を盛り上げていきたいところだ。そのためにはどのような試みが必要か。

NASA

TVクリエイターとして「世界の果てまでイッテQ!」などを立ち上げた日テレ アックスオン代表取締役社長の加藤幸二郎はこう語った。

「この募集はとてもワクワクすること。このワクワクをどれだけ広げられるかです。例えば昨年社会現象となったNizi Projectでは、応募条件を極限までなくしたことで、1万人以上の応募者が集まりました。また、番組を超えて芸能界からも明確な応援者を名乗る人がいたことで彼女たちがすごくよく見えた。さらには選ぶ側にもスター性があり、落ちたことに納得できるような番組の作り方でした。

宇宙飛行士を目指すような人たちが俺もやれるんじゃないかと思える枠組みを用意し、さらにそのなかで選ばれるということはどれだけ夢があることかを、見せられるか。宇宙開発は可能性にかけることです。だから最初から受かるかどうか計算するのでなく、可能性にかけるような気持ちが宇宙開発とリンクしていくのだと思います」

また、漫画「宇宙兄弟」を大ヒットに導き、現在はコルク代表取締役の佐渡島庸平は「JAXAがやる選抜って全て本物で本質的で、真剣にワクワクする思いの結晶です。なのでバズらせようと思わなくても、みんなが話題にできるようにオープンにすることで自然とその中からストーリーを見つけて語り出す人が出てくると思います。今回選抜される人はリアル日々人(「宇宙兄弟」の主人公)だと、大盛り上げさせてもらおうと思っています」と話した。

文=河村優 編集=督あかり

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