新型コロナは心臓にも長期的影響 無症状でも心不全のリスク要因に

Octavio Passos/Getty Images

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で重症化して入院し、退院から数カ月がたった患者の半数以上に、心臓に受けたダメージが残っているとみられることが分かった。

ロンドン周辺の6カ所の病院で治療を受けた感染者148人を6カ月にわたって追跡調査し、その結果をまとめた論文が先ごろ、欧州心臓病学会の医学誌ヨーロピアン・ハート・ジャーナルに掲載された。

論文によると、重症化したことで「トロポニン」と呼ばれるタンパク質のレベルが上昇していた患者は、心臓細胞に損傷を受けていると考えられる。トロポニンは心筋が損傷を受けたときに血中に放出されるもので、動脈閉塞や心臓に炎症が起きたときなどに、そのレベルが上昇する。

たとえば心臓発作を起こせば、非常に高いレベルで確認されることが多くなる。また、トロポニンレベルの上昇は、予後が不良であること、死亡リスクが高まることにも関連している。

これまでの研究でも、COVID-19にかかって重症化した人のおよそ5人に1人に、トロポニンレベルの上昇がみられたことが報告されている。さらに、レベルの上昇がその後の回復の状況、死亡リスクの上昇に関連していることも示されている。だが、損傷の原因や程度などに関する十分な研究は行われていない。

最新の研究では、トロポニンのレベルが上昇していたCOVID-19患者の心臓を磁気共鳴画像法(MRI)で検査した。その結果、心筋の炎症、心臓組織の壊死または損傷、心臓への血液供給量の減少、の3つのうちのいずれか、またはすべてが起きていたことが確認された。

論文の筆頭著者であるユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのマリアナ・フォンタナ教授(心臓病学)は、「退院後1~2カ月が経過した感染者の心筋にも、高い確率で心筋の損傷が確認できた…それらのなかには新しくできたものがあり、COVID-19が原因だと考えることができる」と説明している。

研究の対象とした患者のうち、心臓の異常が確認された人は54%。4分の1以上に炎症による損傷、22%に梗塞または虚血(6%にはこの両方)がみられた。引き続き炎症が起きている人は、8%だった。
次ページ > 心不全を起こす人が増える?

編集=木内涼子

タグ:

連載

新型コロナウイルス特集

ForbesBrandVoice

人気記事