米フォードと独VWが異なる規格を採用
帯域の低い45MHz幅は、“アンライセンス(免許不要)”のワイヤレス通信に割り当てられ、Wi-Fiが使えるようになっている。FCCの前会長であるアジット・パイは、コロナ禍でビデオ会議やテレワークが増え、Wi-Fiの重要性が高まっていることもFCCの決断の背景にあるとし、「米国では、Wi-Fiによって生み出された経済価値は2023年までに倍増し、1兆ドルに達する見込みだ」と述べている。
2019年に、フォードは2022年から全ての車種にC-V2Xを導入すると発表した。一方、世界最大の自動車メーカーであるフォルクスワーゲンはDSRCを導入した車両を生産しており、欧州ではDSRCが標準規格になりつつある。また、世界最大の自動車市場である中国では各社がC-V2Xを採用している。
このように、C-V2Xは優位に立っているが、全世界で勝利するには至っていない。「世界の各地域で異なる規格が導入されるだろう。欧州ではDSRCが勝利すると見られるが、最終的な決断とは限らない」とCommsigniaのPatayは話す。
Patayは、どの規格が勝利するかに関わらず、自動車メーカーは車両へのV2X通信の実装を加速する必要があると指摘する。一部のメーカーは、2023〜24年に生産を開始するとしている。
Patayによると、V2Xセンサーはコストが比較的安いことに加え、自動運転車の普及に向けて重要性がさらに増すという。実際、欧州では安全性の向上を図るため、V2X通信を標準必須技術にするべきという動きが広まっているという。
「どうしてエアバッグやV2Xが必要なのかという議論よりも、どうすればV2Xのメリットを最大化できるかという議論が重要だ。自動車業界や輸送業界では、V2Xをあらゆる車両に搭載する方向に進んでいる」とPatayは話す。
将来的にV2Xは普及するだろうが、世界的な標準規格を定めない限り、地域によってはかつての家庭用ビデオの規格戦争における、負け組となったベータ方式を採用してしまう懸念が生じている。