コネクテッドカーが直面する自動車版「ベータ対VHS戦争」

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クルマ同士やクルマと信号などのインフラが通信を行う上で、双方の通信規格が同じである必要性が出てきた。昨年11月に、米国のFCC(連邦通信委員会)は自動車通信の帯域幅を縮小する決定を下したが、これによって2つの主要な通信規格のうち、一方が優位に立つことになった。

車両同士や車両と信号機との通信は、Vehicle-to-everything(V2X)通信というコンセプトが基礎になっている。センサーを搭載した車両同士は直接通信を行い、衝突を避けるためにお互いの位置を教え合う。同様に、信号機や街路灯、サイクリスト、歩行者との通信も可能だ。

V2X通信技術には、「C-V2X」と「DSRC(dedicated short range communication)」という2つの規格が存在する。問題なのは、これらの規格がかつての「ベータ対VHS」のビデオ戦争のように、互換性がないことだ。ビデオ戦争では勝敗がついたが、V2X通信技術ではまだ明確な勝者は決まっていない。

「我々は、グローバル市場が多数の2次市場に分裂すると考えている」とV2X通信技術を手掛けるCommsignia Ltd.でチーフ・レベニュー・オフィサーを務めるSzabolcs Patayは話す。Commsigniaは、ハンガリーのブタペストに本拠を置く企業だ。

C-V2Xは、多くの携帯電話が採用するチップ技術であるLTEを用いるが、DSRCは、Wi-Fiのようなワイヤレス規格で、自動車の安全通信に最適化されている。両方ともWAVEと呼ばれる通信プロトコルを使用している。

米国では、FCCが5.9GHz帯のうち、帯域幅30MHzをITS(高度道路交通システム)に割り当て、DSRCではなく、C-V2Xを標準技術にすると発表した。この発表は物議を醸したが、これによってC-V2Xが一気に優位となった。

「FCCは、20年以上前にDSRCをITSサービスの標準技術に指名したが、これまで十分な展開がなされておらず、ミッドバンドの周波数帯は長年利用されてこなかった。交通安全を向上させるITSサービスの展開を急ぐため、今後はC-V2Xと互換性がないDSRCから離れ、C-V2Xを推進する」とFCCは声明の中で述べている。
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編集=上田裕資

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