メモを取らないと身が危うい国、議員が同じ質問ばかりする国

2月12日付労働新聞ホームページに掲載された朝鮮労働党中央委員会総会での模様


偉い人の前でメモを取ることで、こびてみせる、という行為は韓国でも見聞きした。ソウルに勤務していたころ、当時の朴槿恵大統領が大統領府で開かれた会議で幹部たちを注意したという話を聞いた。朴大統領は「メモばかり取っていないで、もっと活発に意見を出しなさい」と注意したという。

別に韓国の人たちが抜きんでてメモが好き、ということではない。知り合いの外交官によれば、日韓外交協議が行われると、韓国側でずっとメモしているのはノートテイカーくらい。他の出席者は、重要だと思われるポイントだけを書き留める程度だという。まさにメモ本来の目的を遂行しているわけだ。

ところが、日本側は後ろの席に座っている陪席者を中心に、多くの出席者が一生懸命、ノートテイカーよろしく発言をメモしているという。外交協議では儀礼上、録音などしないケースが多い。日本側の行動は、大勢の人間がそれぞれメモをしておき、後でそれらを突き合わせて、より正確な議事録を作ろうという狙いが込められている。まじめなお国柄とでも言おうか。

あるとき、知り合いの日本外交官とおしゃべりしていると、発展途上国と二国間協議をしたときの苦労話をしてくれた。出席した相手は、大臣はもちろん、局長も課長も課員も、みんなメモを取らない。知り合いは「おいおい、メモを取らないと、後で困るんじゃないのか」と思ったものの、協議は無事に進行し、合意に至った。

知り合いは相手の担当者に「じゃあ、合意文を作ろう」と持ちかけたが、相手は「何を話したか、よく思い出せない」と言って、文書の作成を日本側に丸投げしたという。このケースはまだ可愛い方で、協議で主張してもいない話を合意文に盛り込もうとする国もあるという。

やっぱり、メモは本来の目的に沿って行ってこそ、意味がある。そういえば、国会でメモを取る議員の姿を見かけない。知り合いの霞が関官僚によれば、国会質疑で他の議員の論戦を聞いて、自分の質問内容を変えられる議員はほとんどいないという。

確かに、既に出た答弁に対し、繰り返し同じ質問を投げる議員の姿を何人も見かける。官僚が作ってくれた応答要領通りにしゃべるだけだったり、自分の質問時間にならないと着席しなかったりするのが原因だろう。これではメモをする必要が生まれない。速記をする人がいるからメモは必要ないということかもしれないが、メモを取りたくなるほどの重要な話をしていないということでは、決してあってほしくない。

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文=牧野愛博

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