──工場もアジア6カ国に展開され、会社全体で600名規模に成長されています。グローバルな組織をマネジメントするうえでの苦労をお聞かせください。
組織運営において大切なことは日本と本質的には変わりません。アジア各国は離職率が高いのではないかとよく聞かれますが、当社の場合は日本とあまり変わりません。
例えば香港に出店したときも、日本に出店するときと同じように店を自分たちで作るところから携わってもらいました。そうやって「共に」作るプロセスを経ているからこそ、非常にロイヤリティ高く働いてくれています。
1つだけ日本にはない点で注意すべきことがあるとすると「宗教」です。これは日本人には理解できないと思ったほうがいいです。
例えばマザーハウスの工場があるバングラデシュはイスラム教国なので、彼らはイスラムの戒律を守ることが生まれた時から最優先事項として染み付いています。この感覚は日本人には理解しようとしても本質的に理解できるものではありません。
同様にネパールはヒンドゥー教、インドネシアはイスラム、スリランカは仏教といったように各国で主に信仰されている宗教が異なります。
宗教がコミュニティや働き方に与える影響を理解する力は、日本人に最も欠けている能力です。それを理解したうえで、互いを尊重し合う意識は忘れてはいけません。
リーダーが「Optimistic」であり続ける
──今後のチャレンジについてお聞かせください。
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」というビジョンのもとに10カ国で事業を展開してきましたが、現状は全てアジアです。
しかし途上国は世界中にあるし、「世界に通用する」と言っているのにヨーロッパもアメリカも展開できていません。ですので、ビジョンに対してようやくスタートラインについたところで、これからの5年10年が本当の勝負だと思っています。
これからもビジョンに忠実に、一つでも多くの国からものづくりをし、一つでも多くの国に商品を届けていきたいと思っていきます。
──最後にベンチャーナビの読者である起業家・起業家予備軍の皆さんにメッセージをお願いいたします。
私も13年間マザーハウスという会社をやってきて、何度も会社がなくなるかと思うほど大変なことがあった一方で、マザーハウスのおかげで自分の人生がすごく豊かになったなと思っています。
1つだけ伝えたいのは、私が一番好きな言葉。「Optimistic(楽観的であれ)」です。
今の時代は一つ間違えるとすぐに悲観できる時代です。社会にはいろんな問題があって、リスクも大きいし、技術進歩も早い。そんな中だとしても、悲観からは何も生まれないと思っています。
「Optimistic」であって欲しいし、「Optimistic」の語源である「Optimus(最善を尽くす)」、どんな状況であっても最善を尽くして欲しいし、最後まで最善を尽くす、諦めない人が社会のリーダーになっていく人だと思います。
私もそれをこれからも続けていきたいですし、皆さんもOptimisticでいてほしいと思います。
山崎大祐◎1980年東京生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中にベトナムでストリートチルドレンのドキュメンタリーを撮影したことをきっかけに、途上国の貧困・開発問題に興味を持つ。2003年に新卒でゴールドマン・サックス証券に入社しエコノミストとして経済分析や金融商品提案などに従事。2007年3月に同社を退社後、大学時代のゼミの1年後輩だった山口絵理子氏が創業したマザーハウスの経営への参画し、副社長に就任。
連載:起業家たちの「頭の中」
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