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マスクは厳しい上司として知られるが、ローリンソンのテスラ時代の思い出はポジティブだ。「テスラ時代の私はほとんどの時間、マスクと切磋琢磨しながら過ごしていた。最後の頃を除けばね」と彼は振り返る。

「私たちはテクノロジーとエンジニアリングで、業界のトップを目指すという思いでは一致していたが、意見が分かれる部分もあった」と彼は振り返る。しかし、ローリンソンは、自動車市場に参入するにあたり、マスクをお手本としようとしている。それは、まず超高級車市場に参入し、その次に大衆車市場にマーケットを広げるという戦略だ。

2人の対立の始まりは、モデルSの後継モデルとなるはずだったモデルXのクロスオーバー車両に、マスクが複雑な折り畳み式の「ファルコン・ウイング」ドアを採用するアイデアに固執したことだったという。その結果、Xの発売は約2年遅れ、膨大な追加コストが発生したが、これはローリンソンが予想した通りだったという。

ローリンソンは2012年に英国で暮らす病気の母の介護のためにテスラを退社した。しかし、その1年後には仕事に戻り、2013年にシリコンバレーの新興企業アティエヴァ(Atieva)にCTOとして入社し、当初はバッテリーサプライヤーだった同社をEVメーカーに脱却させた。

2016年後半にアティエヴァは、ルーシッド・モーターズに社名を改めたが、サウジからの出資を受けるまでは資金調達に苦戦したという。2019年にルーシッドのCEOに就任したローリンソンは、自身の株式の持ち分については明らかにしていない。

EV需要の高まりの恩恵を受けているのはルーシッドやテスラだけではない。アマゾンが出資するリヴィアンは今年、電動ピックアップ車両やSUVの納車を開始する。著名なカーデザイナーのヘンリック・フィスカーは、2022年にスタイリッシュな3万7499ドルのEVクロスオーバー「オーシャン」を市場に送り出す予定だ。アップルもEV市場への進出を狙っていると噂され、GMやフォルクスワーゲン、ヒュンダイ、日産などの大手自動車メーカーからも今年、数十台のEV車両が発売される予定だ。

ガートナーのアナリストのマイク・ラムゼイは、超高級車から参入し、より手頃な価格のクルマを目指すルーシッドの計画が、正しいアプローチだと考えている。「この分野では、まずはハイエンド市場を狙い、忠実な顧客基盤を構築した後に、大衆向け市場に乗り込むのが正しい戦略だ」とラムゼイは話す。

マスクとローリソンは、EVに熱い情熱を抱いている点では似た者同士だが、リーダーとしてのアプローチは全く異なっている。テスラは今や、世界最大の時価総額を誇る自動車メーカーとなり、マスクは世界トップの富豪の座を争っている。

ツイッターで4200万人以上のフォロワーを持つマスクは、良くも悪くもテスラの絶対的なリーダーであり、ブランドのシンボルとして君臨している。一方で、ルーシッドのCEOであるローリンソンはツイッターのアカウントすら持っていない。

「ルーシッドという会社はチームワークなんだ」と彼は話す。「マスクと私との大きな違いをもう一つ挙げるとするなら、それは、私は自分が有名になりたいとは思っていない点だ。ピーター・ローリンソンが誰であるかなんて、顧客にはどうでもいいことなんだ」と彼は話した。

翻訳・編集=上田裕資

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