こうした異例の事態の裏には、いくつかの全体的な傾向や現象があり、それが他の出来事を引き起こした可能性が高い。
トレンドのひとつは言うまでもなく、これまでに実施された大規模な財政・金融刺激策だ。これは今後も継続すると考えられ、さらに増加する可能性さえある。金融システムに大量の追加資金が投入され、その大部分が市場に流れ込んでいる。追加資金は多くの場合、経験が浅く、新たな投資方法を模索する投資家の手に渡っている。
ソーシャルメディアも要因のひとつだ。パンデミックのあいだにソーシャルメディアの利用が増加したことで、投資家たちが協調的に行動し、短時間で市場価格に影響を与えることが容易になった。
使いやすく、投資家たちに対して、より頻繁な取引を促すロビンフッドのような新しい投資アプリの登場もこれに関連している。
このような新たな投資活動を生み出した重要な要因は、2019年後半に大手証券会社が株式、ETF、オプションのほとんどの取引で手数料をゼロにしたことだ。手数料撤廃後、1日の平均オンライン取引数は劇的に増加し、取引量も右肩上がりだ。とりわけオプション取引の増加が著しい。
以上のような要因が合わさって、数々のニュースが生まれ、一部の投資家は莫大な利益を手にした。しかし、Reddit取引やショートスクイズなどの出来事は、市場全体のトレンドに大きな影響を与えたわけではない。これらは市場のごく一部であり、全体の取引量に占める割合も小さい。ソーシャルメディアの影響を受けた短期的取引が、市場全体の指数を揺るがすほど重要な要因になるかどうかについては、今後も市場を注視していく必要がある。しかし、現段階では影響は軽微だ。
ここで取り上げたような異例の事態は、投資の世界に広範な影響を与えてはいないため、投資戦略を全面的に見直す必要はない。ただし、こうした出来事に乗って短期的利益をあげたいと思うなら、資金のごく一部を配分することを考えてもいいだろう。