Z世代の葛藤を代弁するポッププリンス、コナン・グレイの本音


外出自粛期間、僕は自分自身と向き合い、自分を表現する方法を模索し、自分の知らなかった一面とたくさん出合うことができました。多くの人が自分自身と深く向き合うと同時に、世の中には変えるべきことがたくさんあることにも気づかされたでしょう。世界中の多くの不平等に目を開かされ「すべてが崩壊する前に何とかしないといけない」と皆が気づき始めたと感じます。

何もかもが当事者としてリアルに感じられ、さまざまな議論が飛び交っている現状で、僕は「いつまでも学び続けなくてはいけない」という気持ちを一層強く抱くようにもなりました。学校教育で教えられたことすべてが事実とは限らないのだと、誰もが気づかされるようなことが世の中では起き続けています。

これからの歴史は、実際に起こったことが曲解されることなく生々しく記録されていくし、音楽はそれを反映する役割を担うと思います。音楽、特に痛みについての音楽は、時代や出来事のみならず、社会で生きる人々の感情や価値観を常に反映します。

人間の感情は非常に内在的であるため、自分自身で処理することは難しい。しかし、音楽にすれば他者へも伝えることができ、感情や価値観を共有することができます。僕は自分の曲を書いているときでも、感情を処理するために「いますぐあの曲を聴かなきゃ」とほかのアーティストの曲を聴きます。それは、代弁者が必要だから。音楽やアートは、人間のリアルな声を聞くための特別な手段であり、それぞれが必要としている価値観を表しているからです。

もしいまの多様性に満ちた音楽を10歳のころに聴いていたら、僕はもっと早く「自分らしく」なれていたかもしれません。だからこそ、次の世代の音楽リスナーが「自分を理解してくれる人がいる」と感じられるようなアーティストがたくさん生まれることを願っています。

若い世代のミュージシャンはみんな変わり者で、10年前には通用しなかったであろう音楽をつくっているけど、実際にはみんな「自分らしさ」を表現しているだけ。僕もそう。「Z世代」と呼ばれる僕たちの世代を、音楽が反映しているのです。


新曲「Overdrive」配信中


コナン・グレイ◎1998年生まれ。サンディエゴ出身のシンガーソングライター。2020年最大のデビュー実績を残す新人アーティスト。18年、初のEP『Sunset Season』のリリースを皮切りに、同世代からの高い支持を得る。

インタビュー・構成=竹田ダニエル

この記事は 「Forbes JAPAN No.076 2020年12月号(2020/10/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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