世界と日本の「変革への熱量」に差が? オンライン開催されたダボス・アジェンダ

会議はオンラインで開催された。フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長(Anadolu Agency/寄稿者/Getty Images)

例年1月に開催されていた世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(通称ダボス会議)は、コロナ禍により8月に延期されたが、その代替イベントとして、1月25日から29日にオンラインでの国際会議「ダボス・アジェンダ」が開かれた。

日本ではあまり報道されなかったが、ダボス・アジェンダではセッション数を絞り、次の7つの主要テーマを設け、活発な議論が交わされた。

1. How to Save the Planet
2. Fairer Economies
3. Tech for Good
4. Society & Future of Work
5. Better Business
6. Healthy Futures
7. Beyond Geopolitics

日本からは、菅義偉首相、河野太郎行政改革担当相、小泉進次郎環境相、竹中平蔵氏らが、それぞれ参加していたが、日本経済の成長戦略として、グリーンやデジタル、さらには東京オリンピック・パラリンピックの開催について発言をしていた。

世界のリーダーたちの力強いメッセージ


筆者はダボス・アジェンダに全日すべて参加したが、その際に感じた印象は、世界のリーダーたちと日本社会の「変革への意欲の差」だった。

例えば、世界のリーダーたちからは、コロナ危機を乗り越える、格差を早急に埋める、環境配慮型に全てのライフスタイルを移行する、気候変動リスクを気候危機として再認識する、次世代の声を積極的に聴く、ステークホルダー資本主義(昨年提唱されたWEFの新たなマニフェスト)を確立し新しい世界経済を創造するなど、未来志向の力強いメッセージを数多く聞くことができた。

なにより、発言者の信念や情熱からは、オンライン会議の画面を通じても伝わるくらいの圧倒的な熱量を感じた。

WEFは昨年6月から、「GREAT RESET(グレートリセット)」の名のもとに、さまざまなイニシアティブを展開している。リセットとは、過去を断ち切ること。すなわち、コロナ以前には戻らない、非連続な変化を必ずや生み出す、そんな強い意思と勇気が込められた言葉だ。

なぜ、そんなにも危機感をもって、WEFに集う世界のリーダーたちはリセットや変革を叫ぶのか。筆者が属するWEFのヤング・グローバルリーダー(YGL)の会合で、率直に聞いてみた。

「それは、国の強制力の差がもたらす、各国民の危機意識の差ではないか」と、英国や中国のYGLは語った。

「ロックダウン」とは都市封鎖を意味する。特に経済先進国は、コロナ禍に対応してすべからくロックダウンを行い、私権や自由を制限した。それには罰則もついていた。

あるYGL曰く、「居住するマンションの住民1人が新型コロナに罹患した際、当該マンションのみならず、隣接するマンションそして近所のスーパー、飲食店なども全て強制的に封鎖され、機能が停止し、1カ月強は部屋から一歩も外に出られなかった」という。行動監視と強烈な罰則があったため、従わざるを得ない状況だったようだ。
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文=蛭間芳樹

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