同校サッカー部を率いる内野智章監督は、初芝橋本高時代(和歌山)に全国高校選手権で4強を経験。高知大を経てJFLの愛媛(現J2)に入団したが1年で退団。2006年に興国高校に就任した。「勝つことも大事だが、それと同じくらい、可能性の高い選手を育てること」を重視している。
2020年度の部員数は270人以上で、チームは8チームに分けられ昇格・降格が随時行われる。スペインへの遠征を取り入れ、育成に力をいれている。そんな内野監督に全国大会に出場できなかった2020年度のチームと育成理論について聞いた。
「内容がなくて勝つ」ではダメ
──2020年度のチームを振り返っていかがですか?
昨年のチームは非常に真面目でした。ですので、1年を通して上達したと思います。ただ一方で、上達して余裕ができてしまったという面がありました。簡単にパスを出せばいいのに、余裕がありすぎて相手に隙を与えてしまう。一生懸命走って、体をはってハードワークはするんですが全員がファンタジスタになってしまった分、チームとして機能しない部分がありましたね。繰り返しますが、彼らは非常に真面目に取り組んでいました。
ただ、ある一定のゾーンにまでいったことから、さらにその上にいくことが簡単ではなかったんですよね。一生懸命やっている分、怒ることもできず難しかったです。偉そうに聞こえるかもですが、昌平高校(埼玉)にも、セレッソ大阪にも勝って、勝ち続けているチームだったのですが、衰退する時って、誰かが悪いのではなく歯車が狂いだすんだなと思いました。そういう意味では、勝ち続けている青森山田(青森)はすごいなと思います。
──青森山田は全国大会で準優勝でした。
昨年末、新チームで初めて青森山田と練習試合をさせてもらいました。トップ選手が抜けたBチームでしたが、出場選手もベンチで控える選手もすごく勝ちにこだわっていることがわかるんですよね。
例えば、前半は青森山田が太陽を背にしていました。キーパーの背中に太陽を持つ形ですね。だから、こちら側は太陽が目に入る。ゴールキーパーからはじまるキックは、全て高く蹴り上げるハイパントが選択されていました。我々は太陽が目に入りますし、こぼれたボールに対しては青森山田の方がフィジカルに秀でているので、彼らがボールキープできていました。
その選択がすごいなと思ったし、守備に対する選手たちの能動的なコミュニケーションもクオリティが高かった。開始早々からベンチもアグレッシブにコーチングをしているし、レフェリーや対戦相手に対して、公式戦のようなテンションで挑んでいました。
これで選手権に行けないBチームなんだと。指導者として、非常に勉強になりましたね。常日頃から彼らもポゼッションや技術などの細かなこだわりがあると思いますが、「勝つ」ということに対して徹底しているなと思いました。