しかし、価格は安くはない。リーダーは、同ソフトウエアの年間使用料が10万ドル(約1060万円)ほどになると説明した。機械そのものが50万ドル(約5300万円)ほどと非常に高価なので、事務機器の提供で一般的に使用される、製品のリースが狙いだ。
モダン・ミラーは2021年晩夏以降、複数の顧客にシステムを導入予定だ。顧客は非公開だが、リーダーはロンドンのデザイナー、マリア・グラチョボゲルが試験段階で契約にサインし、昨年夏に50の顧客に対して同システムを導入したと明かした。システム導入支援のため、リーダーはポップアップとしてのサービス体験も提供している。
新型コロナウイルスの打撃を受けた小売分野ではもちろん、実店舗に行かずとも試着できるあらゆるサービスが有益となるかもしれない。それでもリーダーは、AFSが実店舗とネットでの購入体験を統合するものだと考えている。
モダン・ミラーは、ブランド向けサービスとして仮装ファッションショーや企業向けマーケットプレースも提供している。顧客向けに在庫をデジタル化すれば、他の企業向けの卸売りにもおそらくそれを活用できるだろう。新型コロナウイルスによりファッションショーの概念が大きく変化し、実演でのショーが再び行われるようになっても、ブランドは観客を増やすためバーチャルファッションショーの開催を続けるかもしれない、とリーダーは考えている。
リーダーは、モダン・ミラーのアイデアを少なくとも10年間温めてきた。「このアイデアが生まれたのは電子商取引が始まった時期だったが、業界では当時、こうした変化を受け入れる準備ができていないことが分かっていた」(リーダー)
ファッション業界は毎シーズン新鮮さを求められる一方、大昔からのプロセスに固執することで有名だ。市場が変化に乗り気でないことから、資金確保は難しかった。
リーダーはカナダで建設会社を立ち上げ、新規事業の資金を自分で稼いだと語った。技術的にはこれといった経歴がないため、独学しつつ、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教職員など複数の専門家を探し出し、実現可能性調査を行うとともにソフトウエアの開発とハードウエアのカスタマイズに取り組んだ。