認知症やアルツハイマー病を患った人のほうが新型コロナウイルスに感染しやすく、転帰不良に至りやすいのはなぜなのか。その要因を突き止めるには、さらに研究を重ねる必要がある。
しかし、今回の研究チームやほかの専門家は、認知症やアルツハイマー病の患者は、血液脳関門が損傷していることが一因ではないかとしている。そのせいで、ウイルスや細菌が脳に到達しやすくなっている可能性があるのだ。
また、認知症が、マスクを着用したり、人と距離を保ったり、手を頻繁に洗ったりする能力を妨げている可能性もある。さらには、心血管疾患や糖尿病、肥満、高血圧症などの疾患は、認知症と新型コロナウイルスの両方に共通するリスク要因であり、それが転帰不良を招いていると研究者は指摘する。
ほかの専門家による指摘には、認知症患者の多くが長期療養施設に滞在している点も含まれていた。そうした施設は、長引くパンデミックで大きな打撃を受けている。最新データをみると、米国では新型コロナウイルスに感染して死亡した長期療養施設の居住者と従業員の数が10万人を超えている。長期療養施設における新型コロナウイルス死亡者数は、米国全体の死亡者のほぼ半数を占めている。変異株が新たに発生していることから、これらの数はさらに増えているとみられる。
米国アルツハイマー病協会の推定によれば、米国では65歳以上の580万人、世界では5000万人が、アルツハイマー病や認知症を患っている。