美の多様性を読み解くマーケターの視点


メンタルヘルスに対する理解を広めようと願うセレーナの啓蒙活動から、そのメッセージに共感する多様な人たちによってコミュニティが形成されていく様子から、「Rare Beauty」はコスメブランドの枠を超え、多くの人の意識を変える大きなインパクトを世の中に与えていると言えるだろう。

弱さが力になる。セレーナのメッセージの真意


SNSが発達するにつれて、フェイクニュース、誹謗中傷といったさまざまな問題が起きている昨今。セレーナ自身も、SNSから投げかけられる言葉に何度も傷ついた経験があったという。これまでインスタグラムを休止したこともあるセレーナだが、あらゆる場面で自分自身の心の不調や弱さを包み隠さずに発信してきた。

「Strength is being vulnerable(強さとは弱さ)」。2017年に「TIME」のインタビューで「本当に強い人は、自身の弱さを見せることができる」と語ったセレーナは、自身の失敗談や弱さを見せることで、ファンには自分を取り繕い立派に見せかけることが強さではないことを伝えたいと語った。


「vulnerable(傷つきやすい/弱い)」という言葉は、楽曲の名前にも使われるほどセレーナのキーワードにもなっているようで、「Rare Beauty」の春の新作コレクションも「Stay Vulnerable Collection」と名付けられた。

インスタグラムでは、「弱さが力になっていく。自分達のストーリーをシェアする勇気を持てば、わたしたちは輝ける」と伝えており、繊細な色合いのアイシャドウやチークを纏うだけで、セレーナのメッセージを体感できるようになっている。

誰もが、自身の弱さや傷つきやすい繊細な部分は隠しておきたいもの。しかし、そんな弱さも含めて偽りのない自分らしい生き方を発信することは、オーセンティックで真の信頼を勝ち得るだろう。結果的にそれは強さになっていくのではないか。

「弱さが強さになる」というセレーナの言葉から感じとれるメッセージは、SNS時代を生きる多くの人たちが学び、励みにしていく考え方なのかもしれない。

多様な美しさに気づかせてくれるメイクがあらゆる人の自信になり、内面の心のありようで人生をより良く変えていけるという「Rare Beauty」のブランドのメッセージは、長引くパンデミックで心の健康に向き合う多くの人の悩みを解消に導き、分断が進んでしまった世界における課題解決の手がかりとなっていくのではないだろうか。

偽りなくありのままの自分をさらけ出し、世界に変化をもたらす「イノベーター」としてのセレーナの活動から今後も目が離せない。



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文=田辺敦子

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