弱さが強さになる。セレーナ・ゴメスのコスメブランドの価値観から学べること

セレーナ・ゴメス(Silvia Elizabeth Pangaro / Shutterstock)


2020年「allure」のインタビューで、健康上の問題による体重の変化まで非難されていたことを明かしたセレーナ。見た目についてジャッジされることの多いエンターテイメントの世界であらゆる困難を経験してきたからこそ、このブランドを通して、何より他人の目を気にせず、より多くの人に自分だけの美しさを見出すことの大切さを伝えたいのだろう。

コスメブランドから「コミュニティ」への広がり


「Rare Beauty」の最も注目すべき特徴は、メンタルヘルスへのスティグマ(負のイメージ)を減らすというミッションを掲げ、コスメブランドという概念を超え、自分らしい美しさや多様な美しさを受け入れ合う「コミュニティ」として活動を広げている点だ。

ミッションのメインとなるメンタルヘルスの啓蒙活動では、メンタルヘルスの問題を抱える人たちを支援するチャリティ基金「The Rare Impact Fund」を設立し、今後10年で1億ドル(約105億円)の寄付金を集めるという目標を掲げている。

昨年の世界メンタルヘルスデーには、 パンデミック中に特に重要視される「孤独感を癒すこと」や「人とのつながり」をテーマに、精神科医のヴィヴェク・マーシーとオンラインで対談したセレーナ。長引く自主隔離生活において、オンラインでの人とのつながり方、SNSとの接し方など、心の健康に向き合う人たちの問題を解決に導くディスカッションを展開した。


ヴィヴェク・マーシー氏のような精神科医などの専門家で構成された「Rare Beauty Mental Health Council」も設立しており、専門家や企業とパートナーシップを築き、心の不調などに悩む人たちを幅広くサポートしている。こうしたセレーナの活動や包括的な支援システムは、気軽に外部の機関に相談できる環境を整え、心の病に対する考え方を変えるきっかけとなり、心の不調を感じるユーザーにとって力強い支えになるに違いないだろう。

メンタルヘルスの啓蒙活動以外にも、ローンチ前には、「自身をレア(特別)にしていること」をテーマにストーリーを募りユーザーにブランドの撮影に参加してもらうキャンペーンを実施している。

さらに、ジェンダー、国、性別を問わず、その人らしい美しさを発信するために、ブランドサイトでも、さまざまな美しさを持つユーザーの活動を紹介。コミュニティのミーティングをオンラインで開催するなど、多様な人々の声をブランディングに反映しているのだ。
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文=田辺敦子

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