「王様」然とした佇まい。花道家・渡来徹がパシャを語る

CARTIER Pasha de Cartier

「Tumbler&FLOWERS」を主宰する花道家・渡来徹。カルティエの「パシャ」を語る。


渡来徹さんは、いけばなの魅力を広く伝えるべく、いけばな教室兼オーダー花店「Tumbler&FLOWERS」を主宰する花道家だ。そして、独特の経歴のもち主でもある。
 
彼の社会人としてのキャリアはファッション誌のライター、編集者としてスタートした。これより半年ほど前に「いけばな小原流ビギナーズスクール」に通い始め、花の世界にも足を踏み入れている。

「いけばなは趣味の竹花入れ作りに役立つかなと思って始めました。しかし、お稽古をねていくうちに空間の構成や写真のディレクションなど誌面づくりで、いけばなの考え方に基づいた判断をしている自分に気付いたんです。それ以降、いけばなと編集作業が相関してインプット/アウトプットの機会となっていきました」

一石二鳥の効果をもたらしたいけばなだが、仕事の主軸はあくまでも編集者だった。それが2012年に「Tumbler&FLOWERS」を神宮前にオープンさせたことをきっかけに、軸足は花へと移行する。稽古のほかに展示会やイベントでの装花、ポップアップショップ、撮影用プロップ、カフェやサロンの定期いけ込みなど、花道家としての活動がメインになっていくのだ。

そんな渡来さんが愛用する腕時計がカルティエの「パシャ」。かつて、20歳の誕生祝いにと、ご両親がプレゼントしてくれたものだ。

「好きなものを、と言われたのでカルティエの“パシャ”を選びました。カルティエの裏打ちされた華やかさがどうにも好きで」当時は、お兄さんから譲りうけたカルティエの財布も使っていたというから、腕時計もカルティエを選択するのは当然の成り行きだったのかもしれない。

「『タンク』ではなかったんですね、20歳の僕には。『パシャ』という名前の響きが好きだし、リューズの青い石も美しい、と。着用すると気分が高揚し、なんだか王様っぽい気配がまとえる気がしたんです」

「パシャ」は、1940年代に当時のモロッコ・マラケシュの太守(パシャ)からの依頼を受けて製作されたもの。抱いたイメージには近いものがある。

渡来さんが「パシャ」を手に入れて、20年ちょっと。年を重ね、職業も意識も変化していく中で、今後はどのようにこの時計と向き合っていくのだろうか。

「かつてジュエラーとして僕が唯一、憧れていたカルティエ。実用的な宝飾品として着けている側面もありました。でも今は、ひとまずメタルブレスをレザーストラップに替えようかと検討中。少し控えめにしてから今後の使い道を考えようかと」

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カボションカットの石が埋め込まれたリュウズカバー。このカバーは高い防水性能や軍用時計に見られるねじ込み式機能を備えてている。そして、それを外したくぼみにエングレービングができる。

CARTIER Pasha de Cartier

リニューアルされた新しい「パシャ」には、2つのケースサイズが用意されている。日付ありの41mmと日付なしの35mmだ。ダイヤルは相変わらず視認性が高くグラフィカル。カボション付きのリューズカバー、ストラップと一体化したラグなども健在だ。変更点は、ケースが薄くなったこと、ブレスレットに「スマートリンク」機構を備えたことなどだ。もちろん着け心地は格段にアップ。汎用性の高いモデルだ。

ムーブメント:自動巻き Cal.184 7MC
ケース素材:ステンレススティール
ケース径:41mm
価格:710000円

text by Ryoji Fukutome | illustration by Adam Cruft | edit by Tsuzumi Aoyama

この記事は 「Forbes JAPAN No.076 2020年12月号(2020/10/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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