がん見落としのない社会へ 内視鏡AIで世界をけん引

AIメディカルサービス 多田智裕

『Forbes JAPAN』が毎年、優れたスタートアップ200社を掲載している「日本のスタートアップ大図鑑」。スタートアップ新世代の躍動が話題となった2020年。なかでも、注目する企業6社を紹介する。内視鏡の画像診断を支援するAI開発のAIメディカルサービスもその1社だ。


内視鏡検査でのがん見落としを減らそうと、専門医の診断を支援する「内視鏡AI」を開発しているのがAIメディカルサービス。2019年はシリーズBで46億円を調達し、米食品医薬品局(FDA)から医療機器の優先承認審査制度の対象にも指定された。日本では来年度中の承認申請を目指す。

代表の多田智裕自身、週一回は現場に立つ内視鏡の専門医。内視鏡検査で小さな病変を見つけるのは難しく、医療現場では読影が増えて負担が増加。そこでAIを着想した。

第1弾の内視鏡AIは、映し出される画像の中でがん病変が疑われる部位を検出して指摘してくれる。精度は専門医並みかそれ以上だ。

「内視鏡医なら99%が欲しがる、新しい技術。カーナビやスマホのように、内視鏡AIを使わない内視鏡検査が想像できなくなる時代がくるでしょう」(多田)

設立から3年。東京大学など100以上の医療機関と大規模共同研究を行い、世界トップの質と量を誇るデータを収集。300人以上の内視鏡専門医のネットワークもある。設立時には1億5000万円もの私財をつぎ込み、内視鏡AIに賭けた多田。

「うまくいく確信があったというより、やるしかないと思っていました。3年以上思い切りやり続けてきて、いまは業界トップです」。

ただ・ともひろ◎1971年、8月14日生まれ。東京大学大学院外科学専攻卒業。同大付属病院などを経て、2006年にクリニックを開業。17年にAIメディカルサービスを設立。

text by Michiko Nariai, photograph by Shunichi Oda, Retouch by Shinji Uezumi

この記事は 「Forbes JAPAN No.077 2021年1月号(2020/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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