「明治初期、軽井沢はワイナリーだった」知られざる観光戦略とは

軽井沢観光協会 土屋芳春会長


軽井沢は、高原であったことから1924年(大正13年)にサナトリウムが誕生します。当時は結核療養を目的の一つとしていましたが、今日では健康全体の改善効果にも寄与した場所であったとの評価もみられます。

「屋根のない病院」と先人が称えた軽井沢の気候・風土の感覚は、現在様々な研究者により科学的に解き明かされつつあります。ヘルスとウェルネスの概念も分かれ、ヘルスは医療的判断による心身の病気の改善。ウェルネスは健康に配慮する行動により、心身や精神に良好な健康状態を得る最善の健康、と主張されている方も多くいます。

軽井沢の気候効果は、体力の向上と免疫システムの改善、母体の同等圧力による精神安定や快眠、アレルゲンの低下、身体保護、有酸素運動による心肺機能強化、代謝活発化を促し、低地の首都圏からの来訪者が1000mの高原へ転地することは、気候効果の倍増と疲労感や解放感の改善、五感を研ぎ澄ます効果があります。

また、同様の準高地との違いは、気候がぶつかる霧下気候、山林・原野率、多樹種であり三大野鳥宝庫のような多様な生態系や美観形成などが、ウェルネス・リゾートとしてのクオリティーを高めてると考えられています。

この気候効果は各地でも多くの専門家により研究されていますが、軽井沢についてもウェルネス効果の研究を進めるため、研究機関や企業、学術機関と連携を深め、軽井沢の資源や環境を生かした健康の科学的研究法と実践を通し成果を導きだして行こうとしています。

特に、「信州大学社会基盤研究センター、東京大学先端科学技術研究センター、軽井沢町プロジェクト」がAIやITを活用し新たなイノベーションを起こす研究を始めました。今後の連携は欠かせません。

いずれにしても、軽井沢観光協会は今日のリゾート成立の根底に「ウェルネス環境」が寄与していることを第一に考え、「心身ともに美しい、健康的なリゾートスタイルを提供する」として、ウェルネス・リゾート推進戦略を掲げています。

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旧軽井沢ロータリー。多くの観光客が訪れる場所。ここから旧軽井沢愛宕・三笠別荘エリア、白糸の滝方面と、旧軽井沢銀座通りを経て見晴台(碓氷峠)に分かれる。

量より質を高める軽井沢の観光戦略


鈴木:最後に年間860万人もの観光客が訪れる軽井沢の観光戦略をお聞かせいただけますか?

土屋:軽井沢の観光を区分けすると、一般観光、目的観光、スポーツ、文化・芸術、ビジネスを目的に来軽していることがわかります。観光協会ではそれらのニーズに合わせ様々なアプローチをしていますが、ウェルネス環境と軽井沢ブランドの上質感を念頭に、選ばれるサスティナブルなリゾートとしての価値を発信してまいります。

鈴木:軽井沢の観光戦略の課題は何かありますか?

土屋:国内外対象の長期滞在型リゾート地にふさわしい魅力・再訪したくなる魅力の創出、観光客・別荘所有者などのデータ分析、軽井沢をゲートウェイとした広域観光連携、GWや夏季・連休に集中する渋滞や季節の平準化は大きな課題です。軽井沢はダボス、アスペンを合言葉に世界に通じる高級リゾート、ナレッジ・ハブを目指してまいります。
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文=鈴木幹一

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