長期の社会的孤立で認知症リスク増の可能性 解決図る企業も

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新型コロナウイルス感染症の流行により、世界の数十億人が多くの苦難を経験している。経済の停滞や国レベルでの活動停止、渡航規制、社会的孤立、世界中で非常に多くの死者が出ていることなど、コロナ禍は多くの課題を生んできた。

人々が特に苦しんできたのが社会的孤立だ。対人距離を確保し自主隔離の指針に従うことが求められる中で、年齢にかかわらず多くの人が家族にも会えない状況を強いられてきた。

新たな調査からはこのほど、社会的孤立が感情的・心理社会的レベルで有害であるだけでなく、認知力にも長期的な害をもたらす可能性があると示された。

米疾病対策センター(CDC)によると、米科学工学医学アカデミー(NASEM)の新たな報告書からは45歳以上の成人の3分の1以上が孤独を感じ、65歳以上の成人の4分の1近くが社会的に孤立していると考えられていることが示されている。CDCは「高齢者は一人暮らしや家族・友人の喪失、慢性疾患や聴力の低下などに直面しやすく、孤独や社会的孤立に見舞われるリスクが高い」と述べた。

また医学誌の米国老年精神医学ジャーナル(American Journal of Geriatric Psychiatry)に先日掲載された論文では、社会的孤立と孤独が高齢者の健康と寿命に与える影響が極めて大きいことが指摘されている。著者らは「メタ分析からは、高齢者の間の社会的孤立または孤独が、認知症を発症するリスクの50%の増加、付随的な冠動脈疾患や脳卒中のリスクの30%の増加、全死因死亡率のリスクの26%の増加と関連していることが示された」と説明している。

「孤独だ」「社会的に孤立している」と自己認識している人の多さと、孤立が健康に与える悪影響は実に衝撃的だ。

しかし、新型コロナウイルス感染症を防ぐ上で、社会的孤立はもちろん必要なステップだということがコロナ危機の中で示されてきた。

テクノロジーに通じた人にとって、対人距離を確保する上で生まれた課題の多くはインターネットやデジタルな手段(家族や友人とのビデオ通話や、ネットでのストリーミングやゲームサイトを通じた仲間とのつながりなど)を通して簡単に解決できる。しかし、テクノロジーに関する知識が乏しい人や安定したネット環境がない人にとって、テクノロジーは選択肢にはならなかった。
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翻訳・編集=出田静

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