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新型コロナウイルスの流行が始まってから、米国では東アジア系の人々に対する犯罪が増加する事態となっている。

最近では、91歳の男性が通りがかりに地面へと突き倒される場面を捉えた動画がインターネット上に投稿された。またサンフランシスコでは、84歳の男性が路上で襲撃されて死亡した。

アジア系に対する反感は、トランプ政権が発したメッセージが原因だと指摘する声もあるが、米国では、東アジア系の人々に対する嫌悪の長い歴史がある。1882年には、中国からの移民の数を減らすことを目的とした「中国人排斥法」が成立。中国人の移住や国籍取得が違法となった。19世紀には、東アジア人に対して多くの人が抱いていた人種差別的な恐怖が「黄禍(yellow peril)」という言葉を生んだ。

日本政府は1907年、米国と結んだ「紳士協定」で、米国に渡航を希望する日本人労働者に対して旅券の発行を拒否することに同意した。米国が行った最大の悪事の一つとして、1940年代の日系人強制収容があり、ルーズベルト政権下で10万人以上が収容所に送られた。

アジア系は他のマイノリティーが見習うべき成功グループだとする「モデルマイノリティー」神話のせいで、アジア系に対する犯罪は注目されない場合がある。アジア系の出世を阻む「竹の天井(bamboo ceiling)」などの問題は、十分な理解や議論がなされていない。

米最高裁判所では1922年、小沢孝雄が国を相手取り起こした訴訟で、日系人は法的に白人と見なされるべきかどうかが争われた。日系人が白人だと認められれば、米市民権取得を含むさまざまな恩恵を受けられる。小沢は裁判で、日本人は「黒人ではない」から法的には白人と見なすべきだと主張したが、最高裁はこの主張を退けた。

世間一般の認識として、アジア系は成功しており、学業成績が良く、経済的にも豊かであるから、苦労や損害、差別は経験していないと考えられている。白人中心の社会や白人至上主義を解体するには、アジア系が直面している問題に正面から取り組まなければいけない。

マイノリティー同士を敵対させる白人至上主義


他の有色人種の人々の中には、前述のモデルマイノリティー神話が原因で、アジア系の人々との連帯に消極的な人もいるかもしれない。白人至上主義の陰湿な側面として、抑圧され隷属されているグループは、互いを味方としてではなく敵としてみる考え方を植え付けられる。

有色人種グループはいずれも、自分たちの中にある白人至上主義や反黒人主義に向き合う必要があるが、被差別グループには共通の敵がいる。白人至上主義から解放されるためには、皆が力を合わせて立ち向かうべき共通の敵の存在を認識する必要がある。それにはまず、自分のコミュニティーや周囲に存在するゼノフォビア(異人種排斥感情)について積極的に声を上げ、それを否定する必要がある。

白人至上主義解体の取り組みは、自分が勝つには誰かが負けなければいけないという「ゼロサムゲーム」ではない。あるグループに対する抑圧を認識し、それと闘うことは、別のグループの痛みや損害、トラウマをほごにすることにはならない。自由を実現するには、白人至上主義を分解すると同時に、被差別者グループを個人と集団の両面で議論の中心に据え、その声を強化して、問題に光を当てる必要がある。

編集=遠藤宗生

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