これは、デジタルトランスフォーメーションの物語だ。
また、グーグルの隠れた利点を示すものでもある。グーグルクラウドが、人工知能に関する能力と、同社のモバイルOSであるアンドロイドを基盤に、有力顧客を獲得できたわけだ。
もちろん、アマゾンやマイクロソフトなどの大手企業にも、それぞれ独自の利点がある。アマゾンウェブサービス(AWS)は、クラウド最大のエコシステムを誇っており、サードパーティーの開発者やベンダーのネットワークが確立されている。マイクロソフトは、市場を支配する、エンタープライズ向けソフトウェア・プラットフォームを組み合わせている。「オフィス」や「ウィンドウズ」のバンドルは強力な誘因になる。
グーグルの差別化要因は、その付随的事業にある。つまり、アルファベットの成長には必要不可欠だが、多くの場合は見過ごされがちな事業のことだ。ほとんどの投資家は現在でも、アルファベットの価値を広告資産を基に判断している。検索、マップ、Gメール、ユーチューブは、卓越した広告ベースの事業ではあるが、そうしたブランドは、アルファベットの未来を担うものではない。大きな投資機会は、グーグルクラウドのような、ほとんど目立っていない事業の潜在能力にある。
IT調査会社のガートナーは、クラウドコンピューティング・サービスの世界市場が、2020年に2360億ドル規模に達すると予測している。アナリスト予測によれば、実現可能な最大の市場規模は、2022年までに3550億ドル規模という途方もない大きさになるという。
グーグルクラウドがクラウドインフラ市場を支配する必要はない。まだ駆け出しのこの事業に必要なのは、急速に拡大する市場のなかで、ほどほどにシェアを広げることだけだ。
アルファベットは2月2日、2020年第4四半期と年間の決算を発表した。アナリストらは、初めて明らかにされるグーグルクラウド部門の詳細な内訳を待ち構えていた。今回のフォードとの契約のタイミングは、予想を上回る数字が出る可能性を示唆していた。
クレディ・スイスが前週に発表したリポートでは、グーグルクラウド部門の第4四半期の売上は36億4000万ドルと予想されていた。実際に発表された売上高は38億3100万ドルと、予想を上回るものだった。
近い将来、売りが優勢になることがあれば、投資家はアルファベット株を買うべきだろう。事業の勢いからすれば、アルファベット株は今後の12カ月で、現在の1931ドルから15%上昇し、2220ドル以上で取引されるようになる可能性がある。