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美容ジャーナリスト・齋藤 薫さんが「Marisol」で連載中の美と人生への処方箋。今回は、家にいる幸せに浸ったステイホーム期間を経ての、「外出するエネルギーに必要なもの」について。


昨年、ステイホームがひとまずの解除となった時、元通りの生活に戻れるのを喜ぶ人ばかりではなかった気がする。人間は想像以上に順応性ある生き物で、いろんなことにすぐ慣れていく。与えられた環境で、何とかうまく生きていこうとする賢さを持っている。今回のステイホームでも自分回帰とともに、自宅回帰とでも言うのか、家にいる幸せに気づいた人が少なくなかったということだろう。

それも、人との距離感が大きく変わったから。人付き合いが良く、友達もたくさんいて、職場での人間関係もうまくいっている……実はそういう人ほど、ステイホームによる心の平静に思いがけない幸福感を感じていたりするのだ。

上手に他者と関わってきた人ほど、実は四方八方に気配りして心が疲弊しているのに、心のほつれにも気づかないふりをしていたりする。また一方、素晴らしいキャリアを積み重ねてきた人ほど、嫌でも人と競わされる世界を走り抜けてきて、やっぱり心をすり減らしていたはず。家にこもることで、そういう自分を客観的に見つめ、心身のダメージに初めて気がついた人もいるのだろう。いつもキラキラ輝いている人ほど、ちょっと傷んだ自分を慈しめたのかもしれない。

もちろん人間関係ばかりではない、人混み、喧騒、満員電車、そういうものによるストレスを解除してみて初めて知る安堵。知らなかった平和。そういう時間をくれたのは、好きなものだけに囲まれる自宅。そこに今まで感じたことのない愛着を覚えて、リモートワークを終わらせたくないと思った人も少なくないのだ。

となれば、かつてのように外出する自分に戻るにはまた時間がかかる。そのエネルギーを取り戻すことに汲汲としている人もいるはずだ。だから完全に元に戻すことへの理不尽さを感じ、今後もリモートワークを望む人が圧倒的だと言われる。

それだけに今欲しいのは、逆に外出を苦にせず、喜びを感じるエネルギー。外出に伴う無駄な時間も無駄と思わないだけのエネルギー。ただ、家に平和を見出すと、逆に外出も苦でなくなる不思議な良循環もあって、結果として暮らしがクラスアップするはずなのだ。家での生活が充実すると、ちゃんと心にゆとりができて、他者との関わりを自然に求めるようになってくるからである。だから大丈夫。家をオアシスにできた人はちゃんと外出もできる。

文=齋藤 薫 撮影=John Chan スタイリスト=郡山雅代(STASH)

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