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ポストラグジュアリー 360度の風景

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今年初めのことです。ラグジュアリーを専門とする米国人ビジネスコンサルタントの記事で、次のような記述をみつけました。

「中国の個人最終消費財の購入の75%は女性、そしてミレニアル世代以下の年齢層だ。ラグジュアリーといえば中年以上の男性の世界と想像しやすい。だが、現実はこうだ。2021年はこのデータを念頭に戦略を立てるべき」

やや檄を飛ばしている感じです。高級スポーツカーやプライベートジェットならいざ知らず、アパレルやバッグなどのアクセサリーならば若い女性が購買層の主役。これは20〜30年前から世界で周知の現象で、かのコンサルタントがそれを知らないわけはないです。

それでも彼があえて強調したのは、北米や欧州市場を見ていると、新興ラグジュアリー市場の特徴を忘れやすいからだとぼくは推測しました。スイスにある世界トップの免税システム企業、グローバルブルーによるイタリア市場の販売データを見たことがありますが、アジアや中東からの顧客と比べ米国人の顧客は圧倒的に年齢層が上に偏っていたと記憶しています。

彼はソーシャルメディア上でも自らの記事を紹介しており、そのコメント欄には、北米や欧州の人たちが「そうなのか!知らなかった」「ラグジュアリーの商品群によるだろう」と書いています。ただ一人の中国人の女性だけが、「そう、買い手だけではなく、作り手も若い女性よ」とリアル感溢れるコメントを書いていました。

その指摘の通りで、ぼくもラグジュアリーの流れを見ていて気づくのは、30代と思われる女性が新しい波を作ろうとしていることです。

ラグジュアリーを学び、形にする女性たち


インドに刺繍工場を所有するスイスの「JL ・アトリエ・クチュール」は、フランスやイタリアのトップメゾンに刺繍の入った生地を供給する企業です。最近、ここのディレクター、ジュリア・ラッケンバックが刺繍入りのバッグを独自開発し、昨年末にいくつかの試作品を完成させました。ラグジュアリー商品を自ら手掛け、直接顧客に届けたいとの小さな時からの夢を実現しようとする彼女自身の企画です。


JL ・アトリエ・クチュールのバッグ

ラッケンバックは大学を卒業してから高級ブランド企業に勤めた後、家業「JL ・アトリエ・クチュール」を継ぐのですが、同時にミラノの名門経済大学であるボッコーニ大学修士課程のラグジュアリーマネジメントコースに通います。

ラグジュアリーと認知されるかどうかは地域によって異なるので文化の視点が大切です。同コースはビジネスと文化の両方を総合的に扱い、ある程度体系的に学べるようになっています。30歳前後の彼女は、その学習を経て新事業の立ち上げに関わっています。

かなりクラシックなデザインのバッグですが、ラッケンバックは「トレンドを追わない小さなジュエリーのようなバッグを目指したい」と話しています。

文=安西洋之(前半)、中野香織(後半)

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