ポストラグジュアリー 360度の風景


ジュリア・ラッケンバック、サーラ・エミリア・ベルナの例はまさに新しいラグジュアリーを先導する新生として光り輝いて見えますね。ともにラグジュアリーの現場で製品をつくったり、ラグジュアリーの演出に一役買ったりという経験を積みながら、理論づくりを並行しておこなっているところが頼もしいし、新しい。

ラグジュアリーにかぎらず、最近の起業界隈では、方法論やコンセプトもさることながら、「誰がやるのか?」という作り手の個性に大きな関心が移っていて、その点でも二人は今後の注目株ですね。安西さんが紹介している「買い手でなく、作り手も若い女性よ」というコメントが顕著ですが、ビジネスを興して、これまでにありそうでなかった製品を若手が作るという動きは、日本でも活発に見られます。

日本における2つの特徴


これから挙げる日本の例は、二つの点において、海外で勃興している新しいラグジュアリーの例からは外れます。まず、作り手が「ラグジュアリー」ということをそもそも意識していないということ。次に、作り手が若い女性のみならず、若い男性にも多いということ。

「マザーハウス」は多くの点で日本の新しいラグジュアリーを先導する模範例となると思うのですが、この会社の副社長であり、ラグジュアリー勉強会の論客でもある山崎大祐さんの後輩が、山崎さんに憧れて、次世代型のファッション起業をしています。

ヴィーガンダウンを謳う「カポック ノット」の深井喜翔さん(29)です。彼は老舗アパレルの4代目でもあり、業界の慣習があまりにも変わらないことに業を煮やして、小さくブランドを立ち上げました。

伊ブランド「コスチューム・ナショナル」でデザイナーを務めた人物がデザインするヴィーガンダウンはエイジレス、ジェンダーレスで、地球環境にも優しい。スタッフにも副業の方が多かったり、LGBTが自然に混じっていたりして、会社の在り方からインクルーシブです。すでにLAへの展開も着々と計画しています。


カポック ノットの深井喜翔(撮影:中野香織)

彼に取材したとき、「あなたがやっていることはまさに新しいラグジュアリーのど真ん中よ」と伝えました。彼は一瞬、きょとんとしていましたが、その真意を解説すると、すっかり腑に落ちて「目覚め」たようでした。

前回も書きましたが、いまだ日本ではラグジュアリーの主要イメージがコングロマリット傘下のハイブランド群であり、自分のビジネスとは無関係だと思っていたのでしょう。今後は、ロジックの形成にも一役買ってほしいと願っています。

文=安西洋之(前半)、中野香織(後半)

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