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2021.02.26 16:00

ピルボックスジャパンの越境ECを成功させる方程式。企業価値は“信頼の掛け算”で倍増する

ピルボックスジャパン 代表取締役社長 栖原徹

ピルボックスジャパン 代表取締役社長 栖原徹

バイアウト投資を通して投資先企業の企業価値向上と永続的な成長を支援するクレアシオン・キャピタルが「日本の宝」と評する企業を紹介する連載企画。
第1回は国境を越えて商取引を行う「越境EC」に活路を見出したピルボックスジャパンの成長物語を追った。


越境ECの成果で売上げ倍増


いま、さまざまな業種において商品の販売チャネルが見直され、新たな戦略の立案と速やかな遂行が求められている。なかでも今後、取引規模の伸長率においてもっとも期待されているのがEC(電子商取引)だ。

2020年7月に経済産業省がまとめた報告書「内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、19年の国別BtoC-EC市場規模で世界一となっているのは「19,348億USドル」の中国である。第2位の米国が「5,869億USドル」、4位の日本が「1,154億USドル」であることを踏まえてみると、人口14億人の中国市場が有する購買力は、まさに桁違い。

この巨大市場に乗り込んで売り上げを伸ばしてきたのが、健康食品・サプリメントの開発と販売を手がけるピルボックスジャパンである。

「17年の春から中国のパートナー企業の仲介によって写真共有SNSのRED(小紅書)でプロモーションを開始しました。商材は、16年9月から日本国内のドラッグストアチャネルで販売していた内臓脂肪と皮下脂肪の減らすのを助ける機能性表示食品『önaka(オナカ)』です。美容に関心の高い中国人女性の間で情報拡散されたことが、以降の売り上げが急増する契機となりました」

こう語るのは、ピルボックスジャパン代表取締役社長の栖原徹だ。「önaka」の販売実績は16年に1万8,000個だったが、17年に23万個になり、18年には240万個にまで至った。これ以降は年間130万個ペースの売り上げで、2020年12月時点で累計500万個に達した。これほどまでに売れるとは、栖原も予想していなかったという。結果として、ピルボックスジャパンの18年度の売上高は02年7月の創業以来最高となる41億円を達成し、前年度比約倍増を記録した。


ピルボックスジャパン 代表取締役社長 栖原徹

若い女性の購買意欲に火がついた訳


躍進の足がかりとなったRED(小紅書)は中国版Instagramとも呼ばれる中国最大級のソーシャルメディア。特に中国で最初にデジタルネイティブとなった90年代生まれの若者たちに支持されているのが特徴だ。90后(ジョーリンホウ)と称される彼ら彼女らの情報拡散力およびトレンドの形成力と購買力は絶大で、美容や健康関連の商品を取り扱う越境ECの事業者にとって見逃すことができないマーケットを形成している。

実際のところ、中国の消費者が越境ECで購入している商品の第一位は「化粧品・美容関連製品」、二位が「トイレタリー」、三位が「健康食品」であるとされ、若い女性の旺盛な購買意欲が市場を支えている。

「中国には、KOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーが存在しています。SNS上で多くのフォロワーを抱えていて、消費者の商品購入に大きな影響を与えているのです。そのKOLを起用し、20代の女性をターゲットにしたプロモーションを展開したことが18年における躍進の鍵となりました」

信頼は世界の共通言語だった


さらに19年には、アリババグループが運営している「Tmall Global(天猫国際)」へと販路を拡大。2013年に開設された中国最大の越境ECプラットフォームには、これまでに世界92の国と地域から2万5,000以上の海外ブランドが出店しており、商品カテゴリーは5,100以上に達している。「önaka」の成功は、アリババグループとの強固な関係を構築するきっかけとなった。

現在、中国ではインフルエンサーがライブコマース形式で商品を紹介し、視聴した消費者がその場で実際に購入する購買行動が盛り上がりを見せている。ピルボックスジャパンもWeChatやWeibo、REDなどの従来の配信に加えて、タオバオライブなどのライブコマースによるブランド認知と販売に力を入れている。ありとあらゆる施策を組み合わせることで、中国市場でのプレゼンスを高めているのだ。

ピルボックスジャパンでは、こうした企業価値向上の道筋をどのように分析しているのだろうか。

「自分たちの成長過程に歩調を合わせてくれる信頼できる現地のパートナー企業と真摯に向き合い、KOLを起点にして効果的なマーケティングを展開できたこと。それが成功要因として大きいのは事実ですが、やはり機能性表示食品としてのしっかりとしたエビデンスによって中国市場でもターゲットから信頼を得られたことが最大の勝因ではないかと感じています」

信頼できるパートナーとともに、信頼してもらえるプロダクトを売る。このふたつを揃えたことで、ピルボックスジャパンは越境ECでの成功を現実のものとした。ビジネスの基本が「信頼」であるのは、海を越えた先でも変わらないということだ。

越境ECで勝利を呼んだ掛け算とは


さらに言えば、市場のニーズに合わせて中国版をつくることが成功の要因になるジャパンプロダクトもあるが、「önaka」は中身もパッケージも中国仕様に変更していない。日本版そのままであることに中国の人々は価値を感じているからだ。そこには、「メイド・イン・ジャパンに対する安心感を濃密に味わいたい」という心理が働いている。日本で生産され、日本のドラッグストアで売られているものが、自宅にいながらにして手に入るという安心。「インフルエンサーという外的トリガー」×「安心感という内的トリガー」。これこそが、中国市場で勝利を呼ぶ掛け算となった。

「Tmall Global」では消費者のさまざまなデータを取得することもできるが、直近では「önaka」の購買者のなかで1/3以上が短期間でリピート買いしているとの数字が出ている。これは、選ぶ目が厳しく、目移りが激しい中国市場の女性たちに一過性のブームではない受け入れられ方をしている証左だ。

新たなパートナーとともに、さらなる輝きへ


20年、ピルボックスジャパンは中国ではなく日本において新たなパートナーを得た。将来の株式上場を目指して資本提携の合意に至ったクレアシオン・キャピタルだ。同社の投資チームでヴァイスプレジデントを務める近藤嵩が今後に向けた戦略の一端を明かしてくれた。

「中国の越境ECにおけるプレゼンスを獲得できた現在は、シンガポールをはじめとしたASEAN諸国にも販路を拡充していくために動いているところです。また、より機能性を高めた「önaka W」を今年の4月から市場に投入するなど、さらにブランドを強化していきたいと考えています。今後もデータドリブンで事業戦略を立てていきながら、ピルボックスジャパンのよき伴走者として企業価値の向上をサポートしていきます」

クレアシオン・キャピタルは、「『日本の宝』への投資」を理念として掲げている。越境ECを通して世界へと飛び立ったピルボックスジャパンは、まさに「日本の宝」と言えるだろう。そのサプリは、中国においても光り輝く玉(ぎょく)のごとく女性たちから愛されている。今後の輝きにも注目していきたい。


クレアシオン・キャピタル 投資チーム ヴァイスプレジデント 近藤嵩


投資ファンドの目線──そもそも商品開発の姿勢が違う

越境ECで他社に先んじて成功してきたピルボックスジャパンのナレッジは、今後のビジネスにおいても必ずや生かされていくでしょう。昨年からのコロナ禍においては半年先、一年先の事業環境が読めない状況が続いています。そのようななかでも、信頼関係や厳しい現状を乗り切る馬力といったものをチームで確認できているのがピルボックスジャパンです。

もちろん、商品開発に対するフィロソフィーにも大変共感しています。私は体育会でラグビーをしてきてサプリを摂るのが大好きな人間でしたので、いろいろな商品を試してきました。自分の経験と照らし合わせてみても、ピルボックスジャパンが掲げる「SAFE」「NATURAL」「EFFECTIVE」「INNOVATIVE」という4つのポリシーは優れていると感じています。

商品開発の会議において安易にトレンドを追いかけたり、時間のみを優先したりすることなく、「それは本当にピルボックスジャパンが取り扱うべき商品なのか」と熱く討議している姿も見てきました。23年のIPOを目指し、さらにその後の事業発展も視野に入れて、ともに走ります。

クレアシオン・キャピタル
投資チーム ヴァイスプレジデント
近藤 嵩




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すはら・とおる◎ピルボックスジャパン 代表取締役社長。1963年生まれ。83年に国士舘大学政経学部を中退し、ハウスクリーニングのフランチャイズ店オーナーとして独立。その後、外資系の食品メーカーなどでマーケティングの経験を積み、米国発のサプリメント会社で先進の商品にも触れ、マーケティングとサプリメントに関して集積したナレッジを生かしきるべく、02年にピルボックスジャパンを設立。

こんどう・たかし◎クレアシオン・キャピタル 投資チーム ヴァイスプレジデント。1984年生まれ。早稲田大学スポーツ科学部卒業。豊田通商にてサプライチェーン管理や海外子会社(ベトナム)の業績改善に従事。その後、アクセンチュアにて事業戦略立案や新規事業の開発支援等のコンサルティング経験を経て、2018年にクレアシオン・キャピタルに参画。大学在学中、体育会ラグビー蹴球部に所属。二度、大学日本一となり「荒ぶる」を歌った。

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Promoted by クレアシオン・キャピタル 文=國領磨人 写真=後藤秀二 編集=高城昭夫