テクノロジー

2021.02.14 12:30

「電気だけで飛ぶ宇宙ロケット」を開発中の79歳の物理学者


NASAは、ピア・レビューと実験結果の再現性を研究資金提供の条件としており、今後は北米の様々な分野の科学者やエンジニアがウッドワードの実験結果を検証することになる。

その中には、Michelle BroylesやオンタリオにあるHathaway ResearchのGeorge Hathaway、NASAと契約している科学者、米海軍調査研究所所属の航空宇宙エンジニアであるMike McDonaldなどが含まれる。

これらのメンバーがウッドワードの実験結果を実証できれば、NASAは成功確率の高いテクノロジーに資金を提供したことになるが、有望でも最終的には行き詰まる可能性もある。

現在79歳のウッドワードは、血液のがんであるホジキンリンパ腫の治療を受けている。彼が「ギズモ」と呼ぶ新エンジンの数年後の姿を尋ねると、少し困惑した表情を浮かべたが、こんな答が返ってきた。

「まだあまり考えたことがないが、このロケットエンジンによって太陽系外への飛行が比較的容易で低コストになるので、太陽系外をじっくり見てみたい。地球から比較的近くにあるプロキシマ・ケンタウリに行ってみたい」

ウッドワードは、マッハ効果を使ったエンジンの開発に、人生の大半をつぎ込んできた。きっかけは、1967年に衛星が奇妙な軌道を周回するのを目撃したことと、ニューヨーク大学の物理学教授から、「ある分野で世界トップを目指すのであれば、非常に難解な課題に挑戦し、長年その研究に取り組むことだ」と言われたことだという。

ウッドワードは、自身のこれまでの成果と努力については謙虚だ。「天才のなせる業だと言いたいところだが、実際は運に恵まれただけだ」と彼は言う。

ウッドワードの実験結果を再現し、衛星や宇宙船に実用できるだけの規模にスケールアップするには、驚くほどの運と天才的な才能、それに粘り強さが必要になるだろう。成功する確率は決して高くない。検証を行っているMike McDonaldは、10に1つから1000万に1つの確率だと述べた。

しかし、暗闇で射撃をするようなものであったとしても、より機能的な宇宙飛行の実現につながるのであれば、挑戦する価値はあるだろう。

編集=上田裕資

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