コロナと気候危機にどう対応するか? 小泉環境大臣、脱炭素化へ3つの提言

脱炭素の実現を(Getty Images)


2050年の温室効果ガス排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」は、私が環境大臣に就任した直後は4自治体だったのが、現在約230自治体となり、人口規模では1億人に迫っています。

こうした自治体の「宣言」を「実現」につなげるため、地域の計画作りや人材育成など、自治体の直面する課題について一気通貫でソフト・ハードの両面から支援して脱炭素地域を創出していきます。東京都や埼玉県で、カーボンプライシングの1つである排出量取引制度が既に導入されていることは心強い動きです。

小泉進次郎
脱炭素地域の創出に向けて(Photo by Unsplash)

さらに、菅総理の指示で設置された「国・地方脱炭素実現会議」の場も活用しながら、2050年を待たずに、2025年までの5年間の集中期間に、既存の脱炭素技術をパッケージで導入することで、脱炭素実現の先行モデルを各地に創り出し、その後、次々と地域の「脱炭素ドミノ」を起こして行きたいと思います。

企業の動きも加速しています。我が国のESG金融の規模はこの3年で6倍も増えました。企業の気候変動への取組、影響に関する情報を開示する枠組みであるTCFDの日本の賛同企業数は世界第1位です。また、日本では、企業の内部で炭素の排出量に価格付けすることにより、脱炭素投資や対策を推進する仕組みである「インターナル・カーボンプライシング」を導入している企業が80社を超えるなど、脱炭素経営の取組は着実に進んでいます。

こうした取り組みを後押しするとともに、ローカルSDGsの実現に向けた地域金融機関による「ESG地域金融」など、ESG金融の普及・展開も促進していきます。

3点目は、ライフスタイルの変革です。2050年カーボンニュートラルを実現するには、経済・産業構造に加え、私たちの暮らしのあり方、例えば衣、食、住、移動のあり方など、すべてを変革する必要があります。

日本は、再エネと電気自動車を一挙に普及させる取り組みを開始しました。先日成立した補正予算でも、「動く蓄電池」としての電動車に対し、購入者に再エネ電力100%調達を条件として、購入支援額を倍増することを盛り込みました。

例えば、電気自動車に対して環境省の補助と東京都の補助を合わせると80万円プラス60万円で最大140万円の補助になり、一般的な電気自動車が400万円なのが260万円で大体ガソリン車並になります。再エネ電力とセットで電動車の導入を支援するのは日本で初めての取り組みです。また、環境省が所管する国立公園などにおける電動車の駐車料金の無料化や充電設備の設置を今年、率先して開始します。

このように、我が国の脱炭素に向けた政策の継続性や予見可能性を高め、気候変動政策を強化していきます。コロナと気候危機、この2つの危機を乗り越え、巨大な脱炭素市場をめぐる大競争時代を勝ち抜くために、いまこそ力を合わせて、持続可能な世界の実現に向けて、経済社会のリデザインを共に進めていきましょう。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaを元に作成したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
過去記事はこちら>>

文=小泉進次郎環境大臣

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事