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2021.02.14

コロナ禍でもハワイの不動産は好調。住民の「マイホーム」は遠のく?

堅調なハワイの不動産事情と、その裏の住宅問題とは(Photo by Unsplash)


米フレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)によると、新型コロナウイルスの感染が広がった2020年は全米の住宅ローンの金利が下降の一途をたどり、10回以上も過去最低を更新。2020年12月に発表された「30年物固定金利」の平均が2.66%と、過去50年間で最低となった。2019年は3〜4%、2018年は4%台で推移しており、3%を切る数字は歴史的な低金利であるとわかるだろう。

これによって、不動産の購入や買い替えに踏み切る層を後押し。ハワイに限らず、アメリカ全土で中古住宅販売件数が高水準となり、アメリカ経済を下支えしている。

ハワイのコンドミニアム
*ホノルル不動産協会の発表を元に作成。戸建住宅の取引件数と中間価格()内は前年同月比

さらに、ハワイでは不動産の在庫数が少ないことが、コロナ禍でも不動産市場を活発にさせている。特にコンドミニアムの取引件数は2020年4月から8月まで、前年同月比で約20~50%も減少したものの、価格の落ち込みは激しくない。コンドミニアムは賃貸目的で使用されることが多く、政府の対策で家賃滞納者に対して立ち退きまでの猶予措置が取られたことで、売却したくてもできないケースが増えた可能性がある。そのため、コンドミニアムの売り出しから契約までにかかる日数は、2020年5月は平均で13日と、市場最低レベルまで短縮。2020年11月でも、平均10~16日ととても短く、すぐに買い手が見つかる売り手市場の傾向が続いている。

さらに、リモートでのワークスタイルが広がったことで、全米の都市部から郊外へ移り住む人が多くなっていることも考えられる。例えば、ソフトウェア大手オラクル創業者のラリー・エリソンは、シリコンバレーからハワイのラナイ島へ移住した。このような富裕層が新型コロナウイルスをきっかけに、ハワイの不動産を購入して移住している可能性も大いにあるだろう。このことが、高額物件の取引を活発にさせているかもしれない。

外国人の不動産購入を禁止する法案が浮上。現地住民の苦悩


コロナ禍のハワイの不動産業界の活況は喜ばしいことだ。しかし、ハワイでは、世界中の投資家が不動産投資を行ったり、富裕層がセカンドハウスを購入したりするケースが多い。つまりハワイの不動産市場の成長は、そのようなハワイ外の投資家や富裕層と、ハワイ現地でも経済的に裕福な一部の住民によって支えられている部分が大きい。

一方で、以前から住宅価格の高騰と在庫不足で現地住民が手頃な住宅を購入できないことが問題となっている。そのため、コロナ禍で不動産市場が伸びる反面、現地住民の住宅問題がさらに深刻になる懸念がある。
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文=佐藤まきこ

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