──だから、単なるメンズ美容ではなく、見た目も内面もアップデートする身だしなみ美容の習慣を大切にしていらっしゃるのですね。
ファッションや美容は自分のエゴもあるかもしれませんが、身だしなみは自分のものであり、相手のためのものでもあるんです。身だしなみを整えると相手の印象もアップするし、何より相手が気持ちよく過ごせる。最高の自分のシェアの仕方であり、空間作りに近い感覚。それによって仕事のパフォーマンスも上がるし、自分に自信がついて自己肯定感が高まるという好循環が生まれます。
メンズメイク、どこから始めるべきか?
──身だしなみ美容の最初のステップとしては何がおすすめですか?
まずは化粧水と乳液です。スキンケアで素肌がきれいな状態でいられるなら、ほかは何もしなくていいというのが基本的な僕の考えです。でも、働きざかりの男性だとなかなかそれだけではカバーしきれない部分も出てきますよね。スキンケアでベースを整えつつ、出てきた疲れなどをBBクリームなどで補正していくという方法をすすめています。
──コロナ禍によってオンライン会議が普及して画面上で自分の顔を見る機会が増えると、顔の疲れが気になる男性も増えてきている印象です。
ストレスでニキビができるように、内面からくる外見の変化に敏感になっている印象はありますね。だからこそ、「家でチル(chill out)するのって大事だよね」という話は男性のあいだでもよく聞くようになりました。サロンでもメディテーション、アロマ、ストレッチ、サウナ、CBDなど、家でリラックスする時間をつくって内側から健康になるためのものが話題に上りました。
──この流れで今後メンズコスメ市場は成長していくと思いますか?
正直いってこれまでは業界内だけで盛り上がっている印象がありましたが、近い将来「BBクリームくらい塗らないと身だしなみ整わないでしょ」という時代がくるのではと予想しています。
いまのBBクリームって20年前のワックスと同じような状況で、当時男性でワックスをつける人ってほとんどいなかった。それが、チョキチョキのような雑誌が出て、男性が床屋から美容室に行くようになって「ワックス付けたほうがいいかも」という中でいろいろな商品が出て定着化した。美容室という「場」があって広がったように、オンライン会議やSNSという場によって、広がっていく可能性はあると思います。現代の情報拡散のスピード感なら3〜5年くらいではと思っています。
──今後はどんなビジョンを考えていますか?
すごく大きなビジョンでいうと、「仮想空間の身だしなみコンサル」をやりたいんです。コロナ禍でリアルが閉ざされると、「あつ森(※3)」のような仮想空間でのコミュニケーションが求められた。
今後これが進んでいくと、アバターで営業や会議をするといった、仮想空間でのビジネスが当たり前の時代がくるはずです。そこで、「保険の営業マンなのに、アイドルの格好したアバター」というミスマッチが起こる可能性が高い。いまの活動の先に、未来のビジネスが拓けると信じています。
※1:2000年に内外出版社より創刊されたメンズヘア雑誌で、カリスマ美容師ブームの火付け役となった。2015年7月号をもって休刊。2016年に不定期で復刊。現在は、株式会社CHOKiCHOKiで本誌を年2回刊行するほか、ウェブマガジンやSNSで情報を発信している。
※2:トゥレット症候群とは、音声チックや複数の運動チックが一年以上持続する精神神経疾患。
※3:あつまれどうぶつの森の略。任天堂スイッチ用ゲームソフトで仮想空間の手つかずの島で住人とともにコミュニケーションを取りながらほのぼのとした生活を送ることができる。
宮永えいと◎美容師/YouTuber。フリーランス美容師をする傍ら、株式会社CiiK代表取締役として化粧品等の企画・販売を行う。自身が運営するYouTubeチャンネル"オトナ男子LABO"は開設から2年弱でチャンネル登録者数12万を誇る。昨年12月には初の書籍「大人男子の『超』清潔感ハック」を発売するなど幅広く活躍。
宮永えいとさんのYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCEOMSlnfvEeaA79tTwpxWVg