セクハラとコロナ対策
遠隔勤務ではハラスメントが減っている可能性が高いが、人と直接接する仕事に従事する人は今もハラスメントにさらされている。マスクの着用や対人距離の確保などのコロナ対策によりハラスメントが減ったと言う人もいる一方、ハラスメントの機会が増えたと考える人もいる。
米シカゴのラッシュ大学看護学部の看護師、リズ・ブロックランドは米紙USAトゥデーへの寄稿で、「医療従事者としては、マスクの着用により仕事に支障が出ることが多い。しかし女性としては、マスク着用により安心できる」と述べている。
ブロックランドによると、マスクを着けていないときは、患者や患者の家族から自分の容姿についてコメントされることが多いという。これは、看護師の間ではよくある問題だ。医学情報サイト「メッドスケープ(Medscape)」が2018年に行った世論調査では、看護師の71%が患者からのセクハラを経験していた。
しかしブロックランドは顔をマスクで隠すことで、容姿に注目されることが格段に減ったという。「マスクにより、視線やコメントから守られている気がする」とブロックランドは述べている。
しかし、皆がマスク着用にセクハラ防止効果があると考えているわけではない。米NGOワン・フェア・ウェイジのアンケート調査では、飲食業に従事する女性の43%が、マスクの着用や対人距離の確保などのコロナ対策に関連したセクハラ発言を経験または目撃したと回答した。
あるウエートレスは男性客から「顔を見てチップの額を決めたいので、マスクを取ってほしい」と言われたと報告。同NGOは他にも、アンケート回答者がマスクや対人距離に関して客から受けた不快な発言を250件ほど紹介している。
米紙ワシントン・ポストのモニカ・ヘッシ記者は、この新たな形態のハラスメントについてさらに詳しく調査。ウエーターやバーテンダーを対象に、客からマスクを外すよう言われたときのことについて取材した結果として、「客が口説き文句のつもりで言ったことが、結果的に脅迫のように聞こえていた」と指摘した。
マスクを外すと感染のリスクが高まるため、こうしたハラスメントは特に危険だ。ヘッシが取材したあるバーテンダーは、こう語った。「男性は『マスクを外して』と言うことがチャーミングだと思っているようだが、その言い方によっていやらしく聞こえてしまう。私は22歳で、相手の男性は50代。そうした人から『とてもかわいいね。マスクをしてなければよいのに』と言われる」