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Anuradha Varanasi is a freelance science writer.

Photo by Peter Dazeley/Getty Images

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)の初期に、英国とアイルランドでは3割超の世帯が過剰な買い物をしていた。動物の採餌理論に基づく新たな心理学モデルを用いた調査研究によって、こうした「パニック買い」が所得の高さや子どもの有無、うつや死の不安、他人への不信感などと関連していることもわかった。

必需品のパニック買いや溜め込みは、20世紀初めのスペイン風邪のパンデミック以来、多くの危機の際に起きていることが記録されている。最近では、2003年に中国本土や香港で大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の時にも発生し、塩やコメ、酢、植物油、マスク、薬などが短期間不足する事態になった。

もっとも動物界では、食べ物をはじめとする必要な資源を探したり溜め込んだりするのは、ごくありふれた行動だ。人類もまた、その進化の歴史のほとんどを狩猟採集経済で生きてきた。だが、こうした行動につながるメカニズムを心理学的に考察した研究は、これまでほとんど行われていなかったという。

学術誌プロスワンにこのほど掲載された論文によると、研究チームは、動物はより少ない労力でより多くの見返りを得ようとするという採餌理論に基づく心理学モデルを考案。英国とアイルランドの計3066世帯を対象とした調査でそれをテストした。参加者には、今回のパンデミック初期に過剰な買い物をしたかどうかに加え、所得や近隣コミュニティーへの帰属意識、心理的苦痛など、その要因だった可能性のあるものについて自己申告してもらった。

調査では、英国で36%、アイルランドでは32%の世帯が過剰な買い物をしたと認めた。買い過ぎた商品は一つの分野ではなく、幅広い分野におよんでいることが多かった。また、近隣コミュニティーへの帰属意識が高いほど、買い過ぎが起きやすいこともわかった。親しい隣人たちは、見聞きした商品不足についても話題にしやすいことが主な理由と考えられるという。

研究チームは、供給サイドの不足を見越して必需品を溜め込むのは「合理的な生存戦略」だと指摘。パニック買いによる商品不足を避けたいのなら、政府はこうした行動の裏にある心理や、その引き金となるものに注意を払う必要があると助言している。

編集=江戸伸禎

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