この陰謀論は、「ソブリン・シチズン(独立市民)運動」に端を発する。これは、米国が1871年制定の法律により密かに企業へと作り替えられ、建国の父らが設立した米政府が終了したとする説だ。これによれば、米大統領の就任日は1月20日ではなく、1933年の憲法修正第20条制定前の大統領就任日である3月4日だとされる。
この陰謀論では、最後の真正な大統領は米国が企業となった1871年に第18代大統領を務めていたユリシーズ・グラントであり、Qアノンの信奉者らはトランプが3月4日に第19代米大統領として戻ってくると信じているのだ。
陰謀論の虚構を暴くポッドキャスト「Qアノン・アノニマス(QAnon Anonymous)」の共同ホストであるトラビス・ビューはツイッターで「一部のQアノン信者は、信ぴょう性が否定されているソブリン・シチズンの説を借用して、目標となる日をまたしても先延ばししている。米国は1871年に『企業化』されており、それ以降に成立した憲法修正条項は全て無効なので、トランプが3月4日に大統領に就任するというばかげた主張をしている」と指摘した。
首都ワシントンのトランプ・インターナショナル・ホテルで最も宿泊料金が安い「デラックスキング」の部屋は、広さが約33~44平方メートルで、この時期の宿泊料金は通常1泊476~596ドル(約5万~6万2000円)だ。
しかし興味深いことに、3月3日と4日はこの部屋の宿泊料金が1泊1331ドル(約14万円)となっている。これは通常の最低料金の2.8倍であり、ホテルのウェブサイトに記された2月や3月の宿泊料はどの日をみてもこの半額以下だ。
トランプ大統領の就任初期から同ホテルの利用状況を監視するニュースレター「1100ペンシルベニア」を配信しているジャーナリストのザック・エバーソンによると、3月4日に宿泊料を値上げしているのはトランプ・インターナショナルのみとみられる。首都ワシントンにあるフォーシーズンズやヘイアダムス、セントレジスなど他の高級ホテルでは、3月3日と4日の宿泊料はおおむね通常通りだったという。
エバーソンは「秘密主義的で非上場企業のトランプ・オーガニゼーションからの情報なしでは、価格変動の要因を特定するのは不可能だ」としている。