海外から見えてきた、日本がコロナから学ぶべきこと

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私は米アマゾンをはじめとする、さまざまな多国籍企業で働いてきました。アメリカの商慣習のなかで海外の人と共に働くという経験をし、同時に、海外で活躍されている多くの日本人を見てきたことで、改めて、日本人にはグローバルに活躍する大きなポテンシャルがあることを確信しています。

一方、海外で働いているからこそ、私を含めた日本人の「オポチュニティ(改善余力)」が見えることもあります。特にこの1年は、新型コロナウイルスが流行し、メディアリテラシーやデータリテラシーという点でオポチュニティが浮き彫りになりました。

例えば、私が働くアマゾンでは、意思決定は必ずその背景にある客観的なデータに基づいて行われます。よい判断を下すには、データを適切に取捨選択する力やデータや情報を正しく読み解く力が必要なのですが、日本では「今日の感染者数」ばかりが注目され、検査数の増減や他国の状況が考慮されないままに、情緒的な議論が繰り広げられていることに違和感を感じることがあります。

そこで、このコロナという大きなチャレンジから学びを得るため、2人のゲストを迎えて対談することにしました。

1人目は、スウェーデン在住の加藤尚子さんです。リンショーピン大学にて、Senior Lecturer (看護科学専攻) として活躍されており、3児の母でもあります。スウェーデンでは日本と異なるコロナ対策や報道がなされており、海外の視点から現状やご意見をお話しいただきます。

2人目は、TBSテレビ報道局社会部長の松田崇裕さんです。NY支局での勤務経験もあり、日本と米国の報道を熟知されています。現在も報道の第一線で活躍されており、発信する側からのご意見や考え、日米の比較について伺います。

今回は、海外と日本の新型コロナウイルスに関する現状や政府・メディアのあり方などを比較し、最終的には私たち一人ひとりがそこからどのような学びを得て、今後に活かしていけるのかについて考えたいと思います。

※なお、本コラムは全て、発言者の個人的見解であり、いかなる所属組織とも無関係です。
※情報はコラム執筆時点に基づいており、コラム公開時点の状況とは必ずしも合致しておりません。

スウェーデンのコロナ対策と現状


竹崎孝二(以下、竹崎):加藤さんはスウェーデンにお住まいですが、現状はいかがですか。調べたところによると、2021年1月時点で人口100万人あたりの感染者数が5万人を超えており、これは人口100万人あたりの感染者数が2500人である日本の約20倍とのことですが、スウェーデンでは現在、どのような対策をとっているのでしょうか。

加藤尚子(以下、加藤):2020年の年末から、映画館や図書館、博物館、プールといった施設が閉鎖され、お酒を提供できる時間が午後8時までに制限されました。9名以上が集まるイベントは基本的に禁止となっています。また、飲食店で同席できる人数も決められており、現在は上限が4人とされています。そのため、5人家族だと一緒に外で食事をとることができないんです。

また、これまではマスクの着用よりもソーシャルディスタンスをとることに重きがおかれてきましたが、今年になって公共交通機関でのマスクの着用がようやく義務化されました。

スウェーデンはこれまでロックダウンと銘打った対策は行っていないので、中には「政府は新型コロナウイルス対策をしていない」という印象をもたれている方も多いと思いますが、実際のところは今言ったような対策が打ち出されています。

竹崎:日本では、今年に入り2回目となる緊急事態宣言が出されましたが、飲食店で同席できる人数には制限を設けていませんよね。そう考えると、緊急事態宣言が出ていると言いつつも、スウェーデンの方が厳しく制限をかけているとも言えそうです。

加藤:そもそもロックダウンの定義は国によって違うので、「ロックダウン」や「緊急事態宣言」という言葉に惑わされず、内容を把握することの方が大切だと思います。
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文=伊藤みさき 構成=竹崎孝二

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