ビジネス

2021.03.06

無印良品「コオロギせんべい」完売や自販機の登場、日本でなぜ昆虫食ブーム?

Getty Images


日本では古くから昆虫が食べられてきたものの、一部の地域の郷土食に限定されていた。それでも多くの人が、いなごの佃煮などの昆虫食を食べたことがあるか、あるいはそういう食品があるのを知っている。昆虫を丸ごと食べることに、日本の消費者がほかの国の人々より抵抗を持たないのはそのためだろう。

市場はますます拡大していく


市場に投入される資金が増えれば、消費者が受け入れる食用昆虫の幅も広がるだろうと三橋は考えている。

「粉末製品が顧客拡大の鍵になる。調理の必要がないし、グロテスクなイメージが比較的少ないからだ。だが、われわれのような小規模な新興企業は大量生産に必要な設備を整えることができない。健康食品会社から問い合わせは来るが、われわれの商品は価格が高すぎて彼らのニーズに応えられなかった。それが無印良品の参入によって、市場が大衆向けに開かれた。大企業の参入がもっと増えて市場の拡大に拍車がかかるのを期待している」

希望の光はある。日本は、フードテック(食とテクノロジーの融合)への投資については大きく出遅れていた。2019年の投資額はアメリカのわずか1%なのだ。だが2020年、政府は複数の大手食品会社を含む民間セクターと手を組み、官民共同の研究会を立ち上げた。昆虫食品は、この研究会が取り上げるカテゴリーのひとつに組み込まれた。

消費者も、食用昆虫について知る機会が増えている。2020年11月26日から29日には、東京駅で「虫グルメフェス」が開催され、会社員から家族連れ、十代の女性グループまで合わせて3040人を集めた。

null
東京駅で開催された虫グルメフェスは3000人以上の客を集めた(写真:Forbes JAPAN Web編集部エディター)

イベントでは5つの企業が20を超える商品の試食を行い、昆虫食を一般消費者に紹介した。人気だったのはサゴワームのバターソテー、コオロギのゴーフレット、スズメバチをトッピングした、スズメバチのエキス入りレモンサワーなどだ。

イベントのPR担当、細井大輝はこう語る。「今回のイベントは、食用昆虫について広く知ってもらうための第一歩として成功だった。今後毎年開催し、同時にビジネスセミナーも始める予定だ」。

日本のメディアは2020年を「日本における昆虫食時代の幕開けの年」と呼ぶ。TAKEOの三橋は言う。「ぜひそうなってほしいと思っている」。

翻訳・編集=寺下朋子/S.K.Y.パブリッシング/石井節子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事